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2015年政党政治の感想

 戦後70年の今年は安保法などで与野党対立が続き、粛然とは言えない1年だった感がする。1強多弱と言われる日本の政治状況で、安全保障政策をめぐって与野党の激しい対立が続いた。果たして今後、政党政治は有効に機能して行くだろうか。国民の多くが不安を感じているのではないか、と思われる。
 まず結党60年を迎えた自民党の安倍政権は、安保法案、TPPなどの懸案に取り組んだ。沖縄普天間基地移設問題やデフレ脱却などの懸案には解決の見通しが立っていないとは言え、まずは自らが提起した課題について結論を出した。だが多くの課題を抱えているのも事実だ。特に多様で分厚い保守の風土が党内で消えることを懸念する声は強い。まず、この党の伝統であった派閥政治がなくなり議員の集合体になったことのマイナス面が指摘される。派閥による金権体質がなくなったことは歓迎すべきことかも知れない。だが同時に派閥の担っていた総理候補などリーダーの養成機能、議員を雑巾がけから鍛錬する機会などが減った、と評される。また官邸主導の運営になり政調部会などで議員が活躍する舞台が少なくなった結果、専門性の高い議員が減り、政策決定力にかげりが見られる、とも言われる。安保法案でもリベラル派からの懸念の声はついぞ聞かれなかった。人事でも靖国を参拝する人達が優遇されキャッチオールパーテイー(包括政党)としての懐の深さが消え度量の狭さが指摘される。派閥政治や族議員が跋扈する政治からの脱却は必要だ。だが、かつてリーダーや専門性の高い議員が次々に生み出された土壌、伝統は、新しい仕組みを築く中でぜひ引き継いで欲しいものである。官高党低で多様性が薄れ、政権党としてのダイナミズムが失われていないか。安泰と見える自民党だが、抱える課題も深刻と思える。
 野党は、維新の会の分裂、民主、維新の統一会派結成などの動きがあった。だが野党の中心である民主党には、現実性のないマニフェスト、ポピュリズム(大衆迎合)の典型だった政治手法などで国民の支持を失った、あの3年間の政権時代の総括を深めて欲しいものである。その後も政権戦略や政権政策を描き切れず、安保やTPP問題でも党内一致した方針が発信されていない。1度目は自民党の失政で政権交代を実現できた。2度目は磨かれた政権政策がどうしても必要に思われる。最近の世論調査でも明らかなように安倍政権や自民党の支持理由は「他に適当な人がいない」「変わるべき政党がない」という消極的理由がトップだ。つまり民主党など野党には不安で任せられないことが安倍政権の支持率を支えている。まずは国民が信頼できる政策を練り上げることと、合わせて魅力あるトップリーダーも必要だ。非自民、反自民だけでなく政策と人材で政権を競う姿を見せて欲しいものである。野党の脱皮が求められる。
 政権が変わって対外政策や経済政策が根本から変わることでは国家が危機に陥る。日本の二大政党による政権交代が行われた歴史としては、大正末期から昭和初期にかけて政友会と憲政会(民政党)による政権交代が頻繁に行われた先例がある。だがこの時代も二大政党による切磋琢磨はあったが、2,3年ごとの政権交代のたびに対外政策の基本が変わり、日本の対外的信用が失墜した。経済政策でも政権が変わるたびに積極政策と健全財政の採用が繰り返された(坂野潤治 日本近代史 ちくま新書)。結果、軍部や官僚、マスメデイア世論など超越的勢力が台頭し政党政治の崩壊に繋がる。
政権交代可能な二大政党システムは確立するだろうか。各党に不断の自己改革が求められている。昭和初期の政友会・民政党の歴史も教訓にしながら前進して欲しいものである。

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