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フランス国民と東京都民の選択

 フランスの大統領選挙で39歳のマクロン氏が極右のルペン氏に圧勝した。続く議会選でも発足1年余の新党「共和の国前進」が577議席中308議席を獲得して大勝利した。「民主運動」と合わせ350議席を獲得し、中道右派の共和党や最近まで与党だった社会党は大敗北を喫し空中分解の危機とも言われる。フランス国民が既成政党に「ノー」を突き付けた結果、マクロン政権は安定多数を確保した。
 そして東京でもこれと全く同じような現象が起こった。小池百合子都知事与党の「都民ファーストの会」が55議席に躍進し公明などと合わせ安定多数を確保した。一方、自民党は55議席から23議席と大敗し、民進党もわずか5議席にとどまる結果となった。二つの選挙結果を見ると、小池知事とマクロン大統領のリーダーシップに依存した点、長年、競ってきた既成政党が敗北し、出来たばかりの新政党が多数党になったこと、新党の当選者は政治経験のない議員が大半であること等々、類似点が多い。今後、フランスでは対EUや移民政策など、東京では豊洲市場移転や待機児童問題など具体的な政策対応力が問われることになる。
 さて注目するのは第一に都議選が与えた国政レベルへの影響だ。自民党の記録的大敗は安倍政権に打撃を与え、盤石だった政権運営に変化の潮目をもたらした。通常国会終盤の強引な国会運営、謙虚さや丁寧さを欠いた加計学園問題などの国会答弁、稲田防衛大臣発言や議員の秘書に対する暴言暴行などなど、都民に限らず国民が政権の驕りと緩みを感じ取り都議選の敗北のみならず全国的な支持率の大幅低下をもたらした。国民の不信感は内閣改造だけでは拭いきれないことは明らかで、自民党はどう立て直しを図るのであろうか。一方、民進党の姿も霞む一方だ。首都で存在さえ否定された状況をどう突破して行くのであろうか。フランスと同様、突き付けられた不信感を日本の既成政党は克服できるだろうか。
 第二の注目点は「都民ファーストの会」の国政への進出の行方だ。すでに数人の国会議員が新党結成に向けて動き始めていると報道されている。どんな政策を掲げるのか、経済運営や安全保障でどのような思想を確立して行くのか、まだ姿は見えない。今回の「都民ファーストの会」の勝利は橋下前大阪市長の「大阪維新の会」と同様、大都市からの既成政治への反乱だ。大都市からのうねりがフランスの「共和国前進」と同じ現象を引き起こすことはできるであろうか。果たして、安倍一強に対する対抗軸の形成や野党再編の起爆剤に成り得るであろうか。驕りや緩みの政治に愛想を尽かしても行き場のない国民感情の受け皿に成り得るであろうか。それとも、かつて自民党が弱体化した時、新自由クラブや日本新党、みんなの党などが現れ、歴史的使命を終えると消滅して行ったのと同じ道を辿るのであろうか。「輿論と世論」などの著書で知られる佐藤卓己京大教授は過大な期待は無理筋だとする。期待と疑念が交錯する中、フランス国民の選択と同様に、東京都民の選択が日本の政党政治の再生に繫がることを念じたい。
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