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参院の存在を問う

 参議院の選挙制度改革をめぐって自民党などが提出した公職選挙法改正案は11日参院本会議で可決されたのに続き18日衆院でも与党側の賛成多数で可決された。ただ今回の法案はどうひいき目に見ても納得し難い内容だ。来年夏の参院選から適用しなければ、裁判で一票格差が憲法違反とされる判決が出される可能性が高い。選挙制度の改正には周知期間が必要で、それを考慮するとこの国会での結論が必要だったのだろう。法案の中身は、一票格差是正のため埼玉選挙区を2増する、比例代表に政党の定める候補者順位で当選者を決める「拘束名簿枠」を設け定数を4増する、などだ。どう見ても、その場凌ぎの小手先な対応と言わざるを得ない。とりわけ鳥取・島根、徳島・高知の合区で溢れた議員救済のため拘束名簿の特定枠を導入するなど無節操ぶりにあきれるばかりである。
 そもそも13年参院選の一票格差が「違憲状態」とする最高裁判決があって15年の公選法改正で合区を導入した。その際「19年の参院選に向け抜本的見直しを検討し必ず結論を得る」と付則に明記したのではなかったか。読売、朝日、毎日など各紙の社説は一斉批判し、野党はもちろん、自民党の衆院側からも強い懸念の声が出たのは当然だ。
 もともと参院制度は憲法制定過程から問題を孕んでいた。GHQから示された憲法原案は一院制だった。日本側の強い要望を受け、GHQも貴族院とは違って国民の選挙で選出される第二院ならば、ということで参院制度が生まれた経過がある。そして憲法43条に「両議院は全国民を代表する選挙された議員で組織する」と規定された。しかし憲法制定議会では二つの異なる国民代表機関が存在することへの懸念が何人かの議員から指摘された。時の金森憲法担当国務大臣は衆院の優先性があるから懸念には及ばないと繰り返し答弁した。
 世界で二院制を採っている国は4割弱の60カ国余りだ。第二院はイギリスでは貴族などで構成され世襲制で終身制、ドイツは任命制で州の首相などが務める。フランスは間接選挙で下院議員や県会市町村議員が投票人だ。アメリカの上院は各州から選出される。ほぼ同等の権限を持ち国民の直接選挙で選ばれる日本の参院制度の特異性が目立つ。それが日本の決められない政治の温床になったり、参院選の敗北の責任を取って何人かの総理が辞任したり政治の不安定の要因になってきたのは周知の事実だ。まさに憲法制定当時から懸念されていた課題が浮き彫りになっていると言える。しかも現状の参院は抑制と均衡の役割を果たすどころか衆院のカーボンコピーと揶揄される始末である。
 参院は果たして必要なのか、多くの国のように一院制でも良いのではないか、たとえば年金制度とか財政再建など長期課題に取り組むなど衆院とは違う権限の院にすべきではないか、などなどこれまでも様々な議論が行われてきた。参院の改革は憲法43条や59条の再可決要件などの改正を含む憲法制定時以来の大切な課題だ。会期末のドサクサに紛れて小手先の党利党略的な公選法改正で済まされる問題ではない。改革をネグレクトし平気で定数増など当座を凌ぐ国会に、行財政改革を語ったり、来年の消費増税を唱える資格はあるのだろうか?
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青木 時

久々に歯切れが良いですね。
by 青木 時 (2018-07-30 23:12) 

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