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消費増税と経済論戦への期待

 昭和初期、金解禁と経済不況の責任をめぐり民政党の浜口内閣と野党政友会の間で論戦が行われた。とりわけ1931年(昭和6年)の第59議会での前田中内閣で大蔵大臣を務めた三土忠蔵と時の大蔵大臣井上準之助の国会論戦は、今日でも語り草になっており、時折経済誌などに引用される。当時、浜口内閣は財政緊縮・消費節約が必要だとして官吏の減俸や軍事費の縮減などに取り組んでいた。これに対し三土氏は「政府の見通しの悪さが生産消費の減退、物価の下落、貿易の不振、破産の頻発、失業の続出を招いている」と追及する。また財政悪化の要因についても税収減を通じて公共団体の財政を緊縮したことが原因と指摘した。これに対し井上は「歳出を減らさずに公債を発行し借入金ををして財政緊縮を止めろ、という議論には賛同しかねる」と真正面から反論する。その後、浜口総理が東京駅で襲撃され、後を継いだ若槻内閣も倒れ、政友会犬養内閣が誕生する。大蔵大臣には高橋是清が就任し民政党政権時代の緊縮政策を大転換する。今度は野党に回った井上準之助が真正面から論戦を挑む。この間の経過は城山三郎さんの小説「男子の本懐」に生き生きと描かれている。
 さて先頃、安倍総理が来年10月からの消費税引き上げを宣言した。そして野党の多くは直ちに引き上げ反対を表明した。国民目線から見れば、何故今、消費税を引き上げなければならないか、という点をもっと丁寧に分かりやすく説明して欲しい、軽減税率やポイント還元の話ばかりが前に出て、国民生活への影響は少なくしますよ、と言い訳ばかりが目立つ印象だ。今回の消費税率引き上げで国の財政が好転しプライマリーバランスの黒字化は達成されるのか、増え続ける社会保障費への対応はこれで充分なのか、将来ともさらに引き上げは必要ないのか、等々基本的な説明が求められているのではないだろうか。一方、野党の引き上げ反対論も説明が求められる。国民請けを狙った単なる反対では無責任の感はまぬがれない。かつて緊縮政策を進め国民に節約を訴えた民政党は金解禁直後の昭和5年の総選挙で圧勝する。国民は決して必要な負担を否定するわけではないことの歴史の教訓だ。世界中にポピュリズムが吹き荒れる中、国民の声を聴くとともに、国民を説得することも政治に課せられた大切な役割であることの自覚が大切と思われる。
 近年、日本政治において経済政策をめぐる骨太の議論が聞かれなくなった、と多くの識者が指摘する。与野党の消費増税への対応を見ると体系的な経済政策よりも小手先の国民請けを狙った手法が目につく。自民党には財政再建派や上げ潮派が存在するが、基本的には「大きな政府」路線で成長の成果を配分する路線を歩んできた。対する野党の多くは年金受給者や農業などに新たな配分を約束するなど自民党よりさらに「大きな政府」路線を掲げてきた。欧米では大きな影響力を持つ「小さな政府」路線は日本では小泉内閣の一時期に見られた程度である。消費増税後に日本はどのような道を選択して行くのであろうか。金融、財政政策や構造改革についても骨太の議論を展開して欲しい。スキャンダル追及だけでなく質の高い経済論戦こそ期待される。消費増税を前に、昭和初期に帝国議会で展開されたような経済論戦が甦ることを期待するのは無理筋だろうか。
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