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改元の年にあたって

 新元号がスタートする年を迎えた。30年前の昭和から平成へ改元された時期と国内外の状況が転機にあるという点で似通った状況にあるのではないか、と感じられる。
 1989年1月7日に平成に改元された年は歴史の曲がり角ともいうべき年であった。ベルリンの壁の崩壊と東欧諸国で相次いだ民主化は東西冷戦の終結をもたらした。中国でも100万人の民主化要求デモが起ったが人民解放軍に鎮圧されるという天安門事件が起った。
 日本国内ではリクルート事件で竹下内閣が倒れ日本政治は長く続いた55年体制の崩壊の予兆を示していた。一方、日本経済はバブルの絶頂期にあった。89年末、日経平均株価は史上最高値の38,915円を記録した。狂乱的な土地バブルが起りジャパンマネーが世界を席巻していた。だが90年1月4日の東証の大発会では全面安の展開となりバブル崩壊へと繋がる。
 こうした劇的な変化に対応するため平成の前半は「改革の時代」とも言うべき時代であった。その先陣を切ったのは政治改革であった。55年体制を打破する政治の仕組みが議論され、壮絶な権力闘争も展開された。小選挙区比例代表制が導入され55年体制の政治とは大きく様変わりする。それまでの派閥主導の政治から政党の執行部に権力の集中が進み政治主導の政治に転換が進む。野党でも自民党に対抗する二大政党への再編が繰り返されるようになり平成時代に2度非自民政権が誕生する。そして政治改革に続いて、いわゆる橋本行革と呼ばれる統治機構の改革が実行される。首相官邸の機能を強化し中央省庁再編が実行された。さらに地方分権改革や司法制度改革も取り組まれた。財政構造改革、公務員制度改革なども行われた。これらの改革は充分だったのだろうか。新時代のスタートにあたって、その評価を行いながら次の時代の課題に向けて取り組んで行くことが大切と思われる。
 改革以後の平成時代後半は根本的課題を先送りする風潮が日本社会を覆った。将来世代にツケを先送りする社会保障制度の改革、財政健全化への取り組み、経済の持続的発展の方策、統治機構改革など、時代の求めている課題は先送りされたままだ。こうした課題から逃げ回り、増税問題に蓋をして社会保障の充実を叫ぶ政治が横行する。希望的観測で有権者に美味しい話が語られる。今問われているのは国民に負担を求め説得する「政治の力量」ではないだろうか。長年、日経新聞の政治記者として活躍された清水真人さんは著書「平成デモクラシー史」(ちくま新書)で平成の政治改革を振り返って「政治家が目の色を変えて激論するのを後にも先にも見たことがない」と感想を述べられている。実際あの時代は政治家が自分の選挙区事情など顧みずに天下国家が論じられた。新元号のスタートする今年は平成のスタートと同じく宿命的な変革期を迎えているように思える。平成改革が冷戦の終結に誘引されたように、米国の覇権が揺らぎ中國の台頭が懸念され、イギリス、フランス、ドイツなどの国々の政情不安が広がる。国際社会の不安定化も平成スタートの年と何となく似た様相だ。政党や政治家には、平成改革を超える、時代に立ち向かう情熱、強い決意と心意気で「目の色を変えて」課題に取り組んで欲しいものである。

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