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憲法論議

 安倍総理は内閣改造と党役員人事を行い「憲法改正に向けた議論を力強く推進する」と強調した。衆院の憲法調査会の与野党のメンバーも改憲を何度も実行しているドイツなどへ海外視察に出かけたと報じられており国会での改憲論議が注目される。これまで改憲派は現在の憲法は押しつけ憲法であり、自主憲法制定が必要だとしてきた。対する護憲派は世界に先駆けた誇るべき憲法を守るとして、長らく国民の分断が続いてきた。9条以外の参院改革など統治機構、私学助成など教育改革、緊急事態条項などの議論を含めて対立を克服する方向に議論が進むことは可能だろうか。
 ところで今年、憲法関係で新聞や総合雑誌の書評にも取り上げられ話題になった2冊の本がある。1冊は加藤典洋氏の「9条入門」(創元社)だ。刊行直後に著者が亡くなられこの本が絶筆となった。日本の終戦処理に関し11か国で構成されていた極東委員会は天皇を免罪することに反対だったが、占領軍の最高責任者マッカーサー元帥は天皇を利用して占領統治を出来るだけ有利に進めようと考えていた。憲法9条の戦争放棄条項も、昭和天皇の免罪を各国に認めさせるために作られたものとする。また大統領選出馬を狙っていたマッカーサーのアメリカ本国との駆け引きなど憲法制定の過程が分析される。そして成立過程から世界に先駆け国連による「集団安全保障体制」に主権の一部を委ねるのが9条の本旨であったことが説明される。その後、朝鮮戦争や東西冷戦で集団安全保障体制は実現されなかった結果、護憲派と改憲派の対立が続くようになったが集団安全保障を志向する大切さが主張される。
 もう1冊は篠田英朗氏の「憲法学の病」(新潮新書)だ。日本国憲法には「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」の三大原理で構成されているという見解や、平和主義についても国際法を凌駕して唯一無二の世界最先端の規範だという見解などを批判する。日本の憲法学の主流をなしてきた宮沢俊義、芦部信喜氏等のこうした憲法解釈に異議を唱える。日本国憲法は1928年の不戦条約、1945年の国連憲章などの国際法規を前提に作られたもので国際法規範を遵守する意図を表現していると考えるのが妥当とする。
 当然、2冊の本の評価については異論もあるが、、憲法について従来の通説とは異なる見解に触れることであらためて考えさせてくれる書である。憲法改正が現実の政治課題になりつつあるいま、いわゆる「押しつけ論」の実際の経過、いわゆる「世界最先端憲法」論と国際法との関連などを点検しながら、改憲派と護憲派の対立を止揚して行けるような議論の質が高まることを期待したいものである。


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