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米大統領選と格差問題

 今秋アメリカ大統領選が行われる。3月初旬のスーパーチューズデーを皮切りに本格的な選挙戦を迎える。共和党はトランプ氏の再選を狙い、民主党は大勢の候補者がひしめいて先行きは見通せない状況だ。トランプ大統領は就任以来、アメリカ第一主義を強力に推し進めてきた。対する民主党もポピュリズム左派と称されるサンダース氏など多くの候補者が富裕税導入など大衆受けを狙った政策を前面に打ち出し対抗する。こうした「アメリカ第一主義」はアメリカの国際的地位を著しく低下させてきた。アメリカの国際政治学者で知日派としても知られるジョセフ・ナイ氏は、経済力や軍事力などハード面だけでなく、アメリカの魅力であった民主主義や人権、文化などソフトパワーが損なわれていると指摘する。そして「傲慢」「他者の意見に無配慮」「狭い国益観念」などがソフトパワーを損なう要因だと憂慮する。だが大統領選の序盤を見ると、減税や関税措置などで岩盤支持層に配慮するトランプ氏と、大衆受けを狙う民主党候補の間で、スキャンダル追及やポピュリズム政策の競い合いが続く。アメリカが世界のリーダー国として保持してきた自由と人権、民主政、開かれた自由貿易などの理念は後ろに追いやられた格好だ。
 冷戦終結後の30年間、ヒト、モノ、カネの自由な移動によるグローバリズムによって経済の発展が図られてきた。一方、中下層の所得階層が経済成長から取り残された結果、多くの国で深刻な格差社会が生み出されて社会の分断を招く現象が起こった。低所得層の不満はより低賃金の移民や難民などに向かう。社会への不満、将来への不安を抱く層によって、多文化の共生や寛容の理念などが否定され、自国第一、反移民などの風潮が蔓延した。アメリカに限らず欧州各国にも拡がった格差社会は、多くの国でナショナリズムや保護主義を訴えるポピュリズム政党が伸長し政治の不安定化を招いた。安定した政治が行われているとされる日本でも格差や分断の問題が深刻化してきたと指摘する著作やリポートが近年目立つ。また財政赤字を抱えるにも拘わらず給付など巨額な財政支出を行うという一種のポピュリズム政治で格差問題が先送りされているとも言われる。
 格差社会の対応策として、各国が協調よりも自己主張を強める傾向に対し、第一次や第二次世界大戦前と酷似するとする指摘が最近多い。各国の保護主義や閉鎖的なブロック化の経済政策が二つの大戦前の共通した経済状況だ。格差解決は各国が壁を築いたりポピュリズム政策を選択することで解決されるものではないことは二度の大戦の教訓だ、即効薬は期待せず地道な社会改革の積み重ねが大切なのではないか。そして地球温暖化や核軍縮などグローバル課題にも敢然と取り組むべき時ではないだろうか。アメリカ大統領選は、再び世界から信頼され尊敬される誇り高きアメリカを取り戻す、未来に一筋の光をもたらすものであって欲しいものである。       


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