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ポピュリズムの克服

「一つの妖怪がヨーロッパにあらわれている。…共産主義の妖怪が。」1848年マルクスとエンゲルスによる「共産党宣言」の書き出しの有名な一節である。今日「一つの妖怪が世界にあらわれている。ポピュリズムという妖怪が」とでも表現したい勢いでポピュリズムが世界を覆っている。アメリカにトランプ大統領が誕生し伝統的な共和党の政策を捨て、あからさまな「自国第一主義」を推進する。イギリスでは保守党主導でブレグジットが実現した。イタリアでは左派の「五つ星運動」と極右の「同盟」による連立政権が実現している。その他多くの国でポピュリズム政党が伸長し、世界中にポピュリズムの風が吹きまくる。それは伝統的な「保守」や「リベラル」からも、イデオロギーの対立する左右両派からも生まれている。ポピュリズム政治は古代から批判されその危うさが指摘されてきた。古代ローマ社会では、食料と娯楽を提供する愚民政策でローマ市民が政治的に盲目に置かれていると「パンとサーカス」の諷刺詩として今日に伝わる。20世紀になってからも、当時ワイマール憲法のもと世界でもっとも民主的と言われたドイツで、ポピュリズム政治家ヒトラーが巧みな演説と宣伝で権力を掌握し悲劇へと突き進む。われわれは少し過去を紐解くだけで、ポピュリズムの危険性を教えてくれる多くの歴史を知ることができる。
ポピュリズムは世界的に進むグローバル化に対し「自国第一主義」を唱える。総じて経済政策では政府の関与を小さくするよりは「大きな政府」による国の積極的関与を志向する。MMT(現代貨幣理論)を肯定し、財源は税負担を避け国債で賄い大衆の支持を狙う。いつの時代も単純明快で歯切れのよい主張で国民請けを狙う。さらにヨーロッパ各国の反移民、アメリカのメキシコとの壁、ナチス時代の反ユダヤなど排外主義で敵を作り攻撃する手法が共通する。そこには、人間は不完全なものとし斬新的な改革を訴えてきた寛容で折り目正しい伝統的な保守主義の姿は見られない。社会的公正や多様性を重視するリベラリズムとも無縁である。
日本は、急進的ポピュリズムは見られず安定した政治が続くと評価されてきた。しかし「れいわ新選組」や「NHKから国民を守る党」にポピュリズムの台頭を懸念する指摘もある(「Voice」4月号「日本の生存戦略」松井孝治慶大教授)。だが両党にかぎらず、伝統的保守政党やリベラルを自認する日本の政党に、ポピュリズム政策の競い合いという傾向が強くなっていないか。突然のコロナ危機は、大恐慌から戦争へと突き進んだ20世紀前半の歴史と重なる。コロナ危機後、国際社会は協調して混乱や停滞から社会や経済の再生に立ち向かわなければならない。政党や政治家は大切な局面にあることを自覚し、ポピュリズム政治が蔓延する世界と渡り合ってほしいものである。

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Aokitoki3

マスクの無料配布など、ポピュリズム政治も極まれり。
by Aokitoki3 (2020-05-08 01:53) 

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