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アダムズ方式

 総務省は6月25日2020年の国勢調査の速報値を発表した。この結果から22年以降の衆院選で導入する「アダムズ方式」で試算すると小選挙区の定数配分が10増10減となる。比例定数も北陸信越を含めた見直しが行われる。小選挙区は東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知の5都県で10増、地方の10県で10減となる。この調査結果を受け「地方の声を代弁する議員が減少するのは問題だ」と指摘する何人かの与野党議員の談話が報道された。「地方軽視につながる懸念」などと報じたメデイアもあった。だが一票格差を出来る限り人口比に近づけることは法の下の平等を定めた憲法の要請であり、これまでも何度も定数是正が実行されてきた。地方の声を重視する主張を衆院の定数論議に絡めることは、定数是正を否定したり先延ばしする口実を与える危うさを孕んでいる。
 衆院では1993年の小選挙区比例代表並立制導入以来、各党の定数削減という人気取り政策もあって3回にわたって定数是正が行われてきた。アダムズ方式による制度は一票の格差の違憲状態をなくすために当時の衆院選挙制度に関する調査会の答申を受けて16年に国会で決定された。これまで衆参の定数論議は最高裁の違憲判決を避けるために、その場凌ぎの対応が繰り返されてきた。16年改正も20年国勢調査の結果まで課題を先送りしたため、今秋行われる総選挙は2倍超の格差を抱えたまま行われる。また18年の参院選挙制度の改正では鳥取島根、徳島高知の合区、埼玉の定数増に加えて合区で溢れる議員救済のため比例に拘束名簿枠を法定した。定数は6も増やし一票格差是正の辻褄合わせをした。国民の批判を避けるため、増員する議員経費に充てるため議員一人毎月7万7千円を返納出来るとする、あきれるばかりの法改正も行った。このように国会議員の定数配分をめぐっては各党や議員の事情や思惑などによって、ねじ曲げられたり、現職議員優遇の対応が繰り返されてきた歴史がある。
 こうした経過を見ると、アダムズ方式の導入が地方軽視につながるとする懸念は的外れで、選挙区画定審議会から出される答申を、粛々と法案化して成立することが求められる。一方で、相次ぐ災害や、コロナ対策での知事の皆さんの苦闘ぶりを見ても、大都市への人口集中に対し地方の声を尊重する仕組みを作ることも要請される。これまでも衆参両院の在り方を検討し参院を「地方の府」に作り替えるべきとする主張が多くの識者からなされてきた。世界各国の第2院と比較しても特異な参院の在り方をめぐる議論は、主として与野党の参院側の消極姿勢によって前進していない。また一票の格差をめぐって参院の複数の県をまたぐ合区は今後も増え続け地方の議員はますます減少する可能性が高い。アダムズ方式による衆院の選挙区見直しは参院を含めた改革の機会と捉えるべきと思われる。

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