堀込いくお
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堀込いくお の 徒然ブログ
ikuo-horigome
2023-12-15T16:14:44+09:00
ja
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30年前に学べ
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2023-12-15
政治とカネの問題はなぜ繰り返されるのか。派閥の弊害も言われて久しい。なぜ派閥政治はなくならないのか。こうした国民の疑念に答えるために30年前の政治改革を振り返って教訓を引き出す必要があると思える。1988年、リクルート事件は政財界の一大スキャンダルに発展し竹下内閣の退陣に発展する。危機感を抱いた自民党は伊藤正義本部長、後藤田正晴本部長代理とする政治改革本部を発足させる。そして翌89年、政治改革大綱を党議決定する。この大綱を出発点に94年の政治改革法案成立までの間、日本政治は政治改革が主要課題として展開されて行く。この大綱は自民党の作成であったが、適格な問題意識と視野の広さで、その後与野党や経済団体労働界マスコミ界などの政治改革論議の出発点になった。大綱は「政治とカネ」の問題について政治家個人の特別な問題として捉えるのではなく、それまでの政治全体の制度的問題であると指摘した。その最大の論点になったのが中選挙区制であった。中選挙区制は政権交代のない状態を作り出すとともに、同じ政党の候補者が政策ではなく有権者への利益誘導を競い合いカネのかかる政治の温床になっている、その背後には派閥があり正常な政党間競争を阻んでいる、と画期的な問題提起を行った。この問題提起以降、与野党とも深刻な党内の争いや論議を経ながら、94年に小選挙区比例代表制の衆院選挙制度、政治資金規正法の大幅改正、政党助成法、小選挙区画定審議会法の政治改革4法案を成立させる。大綱は、政治とカネについて政治資金の節減、公正、公開の徹底を強調している。今回焦点になっている政治資金パーテイーについても閣僚、派閥などによる開催の自粛を徹底するとともに官公庁の介在の排除、一定金額を超える同一の者による購入の禁止などの立法措置を講じる、と記している。その後、与野党の折衝で政党以外への企業団体献金の禁止なども合意され腐敗防止関連の法も成立する。今、問題になっている政治資金パーテイーについては公開基準が与党案5万円、自民党案50万円であったが20万円で決着した経過がある。しかし、派閥政治の温床と指摘された同志打ちが行われる中選挙区制がなくなっても、派閥は解消されなかった。与野党の競い合いを通じて政権交代を期待した制度設計も近年は野党の弱体化などもあり一党支配体制が続いている。派閥による政治資金規正法違反があからさまに行われている事態も露呈された。すざましい論議が展開され海部..
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ikuo-horigome
2023-12-15T16:14:44+09:00
1988年、リクルート事件は政財界の一大スキャンダルに発展し竹下内閣の退陣に発展する。危機感を抱いた自民党は伊藤正義本部長、後藤田正晴本部長代理とする政治改革本部を発足させる。そして翌89年、政治改革大綱を党議決定する。この大綱を出発点に94年の政治改革法案成立までの間、日本政治は政治改革が主要課題として展開されて行く。この大綱は自民党の作成であったが、適格な問題意識と視野の広さで、その後与野党や経済団体労働界マスコミ界などの政治改革論議の出発点になった。大綱は「政治とカネ」の問題について政治家個人の特別な問題として捉えるのではなく、それまでの政治全体の制度的問題であると指摘した。その最大の論点になったのが中選挙区制であった。中選挙区制は政権交代のない状態を作り出すとともに、同じ政党の候補者が政策ではなく有権者への利益誘導を競い合いカネのかかる政治の温床になっている、その背後には派閥があり正常な政党間競争を阻んでいる、と画期的な問題提起を行った。この問題提起以降、与野党とも深刻な党内の争いや論議を経ながら、94年に小選挙区比例代表制の衆院選挙制度、政治資金規正法の大幅改正、政党助成法、小選挙区画定審議会法の政治改革4法案を成立させる。
大綱は、政治とカネについて政治資金の節減、公正、公開の徹底を強調している。今回焦点になっている政治資金パーテイーについても閣僚、派閥などによる開催の自粛を徹底するとともに官公庁の介在の排除、一定金額を超える同一の者による購入の禁止などの立法措置を講じる、と記している。その後、与野党の折衝で政党以外への企業団体献金の禁止なども合意され腐敗防止関連の法も成立する。今、問題になっている政治資金パーテイーについては公開基準が与党案5万円、自民党案50万円であったが20万円で決着した経過がある。
しかし、派閥政治の温床と指摘された同志打ちが行われる中選挙区制がなくなっても、派閥は解消されなかった。与野党の競い合いを通じて政権交代を期待した制度設計も近年は野党の弱体化などもあり一党支配体制が続いている。派閥による政治資金規正法違反があからさまに行われている事態も露呈された。すざましい論議が展開され海部、宮澤内閣が倒れ自民党分裂という事態にまで発展し実現した政治改革法案であったが、30年経過した現実政治の実態は政治改革の理念とは大きくかけ離れているようだ。目指した政策本位、政党本位の政治は幻に終わったかに見える。安倍元総理も岸田総理も93年当選組であり89年以来の改革論議に参加していない。この時代を知る議員は石破茂氏などわずかになった。しかし今回のスキャンダルを受け、与野党とも30年前に苦闘を重ねて成立した政治改革の歴史を学んで教訓にして欲しいものである。その上で、なぜ30年前の理念は現実政治の中で生かされなかったのかを分析し、政策政党本位の政治、派閥の解消、政治資金のあり方などを議論し令和の政治改革運動を進めるべきと思われる。
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「保守」と「リベラル」(読後感)
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2023-02-26
日本で保守とは、憲法改正や靖国参拝に熱心で、女系天皇制導入に反対でLGPTや夫婦別姓を否定する政治だと一般的に認識される場合が多い。だが、イギリスのエドマンド・パークに端を発する本来の保守思想とは、人間は愚かで間違いやすく理性的な能力や判断力には限界がある。社会に継承されてきた経験知や伝統、良識などに依拠し斬新的な改革を進めて行くべきとする。そして保守主義はあくまで自由を追求する価値観を有するものであり反動や復古主義とは異なるものとされる。 宇野重規氏が1月に「日本の保守とリベラル」(中公選書)を発刊した。日本の保守主義もリベラリズムも成立に必要な継続性、連続性が明治維新、第2次大戦の敗北で断たれたとする。それでも学ぶべき系譜は多く、保守主義では伊藤博文、陸奥宗光、原敬、西園寺公望、牧野伸顕から吉田茂へと連なってきたとし、リベラリズム的流れは福沢諭吉、石橋湛山、清沢洌などの思想に見られるとする。著者は、こうした近現代日本における「保守」と「リベラル」の議論の蓄積を再確認し、現代に発展させて行くべきとする。現状維持を容認する思想なき保守から脱皮し、自らの歴史と伝統に真に誇りを持つがゆえに必要な変革を行う「保守」、自らが社会を担っているという自負と責任感を持つがゆえに寛容で、懐の深い「保守」となることを求める。排外的なナショナリズムやジエンダー平等や文化の多様性の排撃などは保守主義とは無縁だとも指摘する。 そして、歴史的蓄積が幅広い裾野を持つものでなかったことを踏まえながらも、「好き勝手」や「わがまま」の自由とは違う、単なる個人の自由や利己主義でもない、個人の責任を強調しつつ、多様な価値観を認め、受け入れるだけの気概と道理を持ったリベラリズムの確立の必要性も訴える。著者は「保守」も「リベラル」も、両者は同時に追求することが可能であり追及されて然るべきとする。 欧米におけるポピュリズム政治の台頭は、長い歴史を持つ「保守」や「リベラリズム」に揺らぎをもたらしている。日本政治もまた大衆受けを競う政治が横行する。著者の危機感は現代政治に重い課題を突き付ける。共感するばかりである。
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ikuo-horigome
2023-02-26T11:22:30+09:00
宇野重規氏が1月に「日本の保守とリベラル」(中公選書)を発刊した。日本の保守主義もリベラリズムも成立に必要な継続性、連続性が明治維新、第2次大戦の敗北で断たれたとする。それでも学ぶべき系譜は多く、保守主義では伊藤博文、陸奥宗光、原敬、西園寺公望、牧野伸顕から吉田茂へと連なってきたとし、リベラリズム的流れは福沢諭吉、石橋湛山、清沢洌などの思想に見られるとする。著者は、こうした近現代日本における「保守」と「リベラル」の議論の蓄積を再確認し、現代に発展させて行くべきとする。現状維持を容認する思想なき保守から脱皮し、自らの歴史と伝統に真に誇りを持つがゆえに必要な変革を行う「保守」、自らが社会を担っているという自負と責任感を持つがゆえに寛容で、懐の深い「保守」となることを求める。排外的なナショナリズムやジエンダー平等や文化の多様性の排撃などは保守主義とは無縁だとも指摘する。
そして、歴史的蓄積が幅広い裾野を持つものでなかったことを踏まえながらも、「好き勝手」や「わがまま」の自由とは違う、単なる個人の自由や利己主義でもない、個人の責任を強調しつつ、多様な価値観を認め、受け入れるだけの気概と道理を持ったリベラリズムの確立の必要性も訴える。著者は「保守」も「リベラル」も、両者は同時に追求することが可能であり追及されて然るべきとする。
欧米におけるポピュリズム政治の台頭は、長い歴史を持つ「保守」や「リベラリズム」に揺らぎをもたらしている。日本政治もまた大衆受けを競う政治が横行する。
著者の危機感は現代政治に重い課題を突き付ける。共感するばかりである。
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国葬で感じたこと
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2022-10-02
賛否が渦巻く中で安倍元総理の国葬が行われた。葬儀では友人代表の立場で読まれた菅前総理の弔辞が話題となった。菅氏は「語りあひて 尽くしゝ人は先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」と伊藤博文をしのんで詠んだ山県有朋の歌でしめくくった。この弔辞をめぐって御厨貴東大教授など大方の評価は高かったが、一部のマスコミや評論家は戦前陸軍を形成し日本を第2次大戦に導く方向性を築いた人物を引き合いに出したと批判した。一方、伊藤之雄氏の著作「山県有朋」(文春新書)によれば山県が築いた日本陸軍は、太平洋戦争へ導いた日本陸軍に直接つながるわけではないと明らかにする。山県は軍拡を主張する一方、大陸政策については常に拡大に慎重であったことも記されている。そして「愚直」という表現がもっともふさわしい山県の生涯は、幕末・維新の中で倒れていった多くの志士たちに対する責任感だっただろうと推測する。このように100年も前に亡くなった山県の評価さえ両極端に分かれる。政治家の場合、歴史上の評価は直ちには定まらず後世の判断に委ねられる。果たして国葬に賛否両論が渦巻いた安倍氏は後世どう評価されるであろうか。もう一つ,気になる点は、安倍元総理を銃撃した容疑者について、旧統一教会の被害者としてメデイアの報道が続いている点だ。「暴力は許されない」という前提はつけているものの、容疑者に同情的か、安倍元総理や自民党と旧統一教会との結びつきが事件の深層だとするような報道が連日のようにメデイアで行われている。だが、これは論理のすり替えだ。容疑者の身勝手な動機や手製の銃を作った周到さを決して容認してはならないと思われる。戦前の歴史を紐解くと、血盟団による井上準之助、団琢磨暗殺, 5,15事件、永田鉄山暗殺, 2,26事件など相次ぐテロ事件が繰り返された。テロに同情的な風潮などが軍部の勢力拡大から戦争への道へ突き進む大きな要因となった。歴史は、いささかもテロに同情したり容認したりする風潮を繰り返してはならないことを教えている。そして旧統一教会が詐欺的商法などを繰り返し、多くの被害者を出してきた社会的問題の多い団体であることは明らかだ。選挙支援などを受けたり、集会に参加したりメッセージを送るなど教団に社会的正当性を与えてきた政治家は、道義的責任を感じて反省するのは当然だ。だがカルトと普通の宗教を区別することは相当難しい。私はオウム真理教の取り締まり立法に関わってきたが「無差別大..
未分類
ikuo-horigome
2022-10-02T14:52:57+09:00
このように100年も前に亡くなった山県の評価さえ両極端に分かれる。政治家の場合、歴史上の評価は直ちには定まらず後世の判断に委ねられる。果たして国葬に賛否両論が渦巻いた安倍氏は後世どう評価されるであろうか。
もう一つ,気になる点は、安倍元総理を銃撃した容疑者について、旧統一教会の被害者としてメデイアの報道が続いている点だ。「暴力は許されない」という前提はつけているものの、容疑者に同情的か、安倍元総理や自民党と旧統一教会との結びつきが事件の深層だとするような報道が連日のようにメデイアで行われている。だが、これは論理のすり替えだ。容疑者の身勝手な動機や手製の銃を作った周到さを決して容認してはならないと思われる。戦前の歴史を紐解くと、血盟団による井上準之助、団琢磨暗殺, 5,15事件、永田鉄山暗殺, 2,26事件など相次ぐテロ事件が繰り返された。テロに同情的な風潮などが軍部の勢力拡大から戦争への道へ突き進む大きな要因となった。歴史は、いささかもテロに同情したり容認したりする風潮を繰り返してはならないことを教えている。
そして旧統一教会が詐欺的商法などを繰り返し、多くの被害者を出してきた社会的問題の多い団体であることは明らかだ。選挙支援などを受けたり、集会に参加したりメッセージを送るなど教団に社会的正当性を与えてきた政治家は、道義的責任を感じて反省するのは当然だ。だがカルトと普通の宗教を区別することは相当難しい。私はオウム真理教の取り締まり立法に関わってきたが「無差別大量殺人行為を行った団体」と特定して法案化した経過を思い出している。信教の自由に配慮しつつ被害者の再発を防止する対策の確立が期待される。
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大戦の教訓とロシアの侵攻
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2022-05-12
戦争の惨劇がまたも繰り返されている。これまで各国は第1次大戦後も第2次大戦後も戦争の惨禍を繰り返さない平和の誓いを行ってきた。4年余に及んだ第1次大戦は空前の戦死傷者を出しヨーロッパに破滅的な結果をもたらし1918年に終わる。翌年パリで講和会議が開かれる。多国間協調の国際機構として国際連盟を設立し、パリ不戦条約が締結される。締約国は国際紛争解決のため戦争に訴えることを放棄し平和的手段で解決することが合意された。だが1939年ドイツのポーランド侵攻を契機に第2次大戦に突入し不戦の誓いは、わずか20年で打ち破られる。5年余にわたる戦争の結果、またしても世界中で未曾有の戦死者が出る。この第2次大戦後、連合国は国連憲章を定め国際連合を設立する。大国に責任ある地位を与えなかったことなど国際連盟の失敗を総括し、常任理事国5大国の拒否権などを定めた。そして、すべての加盟国は、その国際関係において武力による威嚇又は武力の行使の禁止を国連憲章で謳った。日本国憲法9条1項はこの28年の不戦条約と45年の国連憲章を前提に作られたとされる。国連発足後も朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争などに加え、中東やアフガニスタンなどで紛争が繰り返された。だが各国の自重や国際協調の動き、抑止力なども働き、大規模な国家間の侵略戦争は回避されてきた。しかし、とうとう国家による露骨な侵略戦争が国連常任理事国ロシアによって引き起こされ、国連の存在価値が問われる事態になった。 今回のロシアによるウクライナへの侵攻は専制政治の横暴で野蛮な体質を世界に見せつけた。プーチン体制は独裁者による独断政治で、極端な権力集中体制を取り政権内に抑制機能が全く働いていないことが明らかになった。そして専制政治の特徴である政府と異なる意見の表明や行動などについては、容赦のない逮捕、罰金刑などが適用される。またメデイアの徹底統制、SNSの監視に加え、偽情報を繰り返すことで世論操作を行い、国内の議論や批判を封じ込める。戦場では目を覆いたくなるような大量虐殺が繰り返される。 G7各国を中心にロシア包囲網が進められているが、残念ながら事態は膠着し長期化されるというのが大方の予想だ。今後、戦争による世界経済への影響が浸透し、日常生活へ及ぶことも憂慮される。経済への不安から西側諸国にも国際協調よりも自国第1主義が強まることが危惧される。アメリカやヨーロッパの多くの国での選挙状況や政党支持率など..
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ikuo-horigome
2022-05-12T14:55:52+09:00
今回のロシアによるウクライナへの侵攻は専制政治の横暴で野蛮な体質を世界に見せつけた。プーチン体制は独裁者による独断政治で、極端な権力集中体制を取り政権内に抑制機能が全く働いていないことが明らかになった。そして専制政治の特徴である政府と異なる意見の表明や行動などについては、容赦のない逮捕、罰金刑などが適用される。またメデイアの徹底統制、SNSの監視に加え、偽情報を繰り返すことで世論操作を行い、国内の議論や批判を封じ込める。戦場では目を覆いたくなるような大量虐殺が繰り返される。
G7各国を中心にロシア包囲網が進められているが、残念ながら事態は膠着し長期化されるというのが大方の予想だ。今後、戦争による世界経済への影響が浸透し、日常生活へ及ぶことも憂慮される。経済への不安から西側諸国にも国際協調よりも自国第1主義が強まることが危惧される。アメリカやヨーロッパの多くの国での選挙状況や政党支持率など世論調査を見ると一抹の不安を感ぜざるを得ない。西側諸国は専制政治の蛮行を許さず、平和を希求する揺るぎない体制を存続し、不安を杞憂に終わらせて欲しいものである。
日本は、今回ロシアが「特別軍事作戦」と称するように、かつて「満州事変」「支那事変」を正当化し大戦に至った歴史体験から、自由と人権、民主政はかけがえのない価値であることを学んできた。ロシアとは北の国境を接し北方領土の返還問題を抱える。近隣には専制政治の国家も存在する。自らの未来のためにも、国際社会とともに2度の大戦の教訓を生かし平和を守り抜く姿勢を貫きたいものである。
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民主政の試練
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2021-09-30
ミャンマーでは今年2月クーデターによって軍が権力を掌握した。アフガニスタンでは8月に首都カブールを制圧した軍事組織タリバンが実権を握った。民主化を求める民衆の抵抗は抑圧され、両国とも数十年に及んだ民主化の取り組みは挫折し軍や武装勢力による専制政治の国家が誕生した。またポーランドやハンガリーなどの東欧諸国でも民主政治が後退しているとされる。プーチン政権のロシア、エルドアン政権のトルコなども民主主義国としては疑わしい状況だと外交専門家などから指摘される。このように多くの国で民主政の後退現象や揺らぎが現れている。 コロナウイルスへの対応でも民主主義国家よりも専制主義や権威主義の国家の方が抑え込みに成功しているとする見方もある。権威主義国家ではロックダウン(都市封鎖)や個人の行動の規制が容易で、効率的にコロナ対策に効果を上げているとされる。新型コロナ感染症は自由の制約という、民主主義国家のもっとも不得意とする対策が求められた。いつでも人間の自由を制約出来る権威主義国家と違い、民主主義国家では個人の自由との調整を図りつつ、悪戦苦闘の対応が続く。これに対し早稲田大学講師の安中進氏は「民主主義的価値に疑問が投げかけられる中、コロナの死者数などデータの透明性を考慮すると権威主義国家の優位性は認められない」「政治体制の優劣を断定的に判断することは出来ない」とする(中央公論9月号)。そして民主主義や自由は、人間社会が長い政治的闘争をへて確立してきた理念であり、不用意に貶めることがあってはならない、と指摘する。 こうした中、6月に英国で開催されたG7サミット(先進7カ国首脳会議)はG7に疑義を唱えたトランプ時代から再びアメリカが復帰し首脳宣言が発表された。宣言は専制主義に対する民主主義の勝利のための努力と団結の必要性をうたった。また気候変動問題や途上国へのコロナワクチン供給問題などとともに、経済力や軍事力でアメリカに迫る大国になった中国に対しては、新疆ウイグル自治区の人権問題、香港の自治と自由の抑圧などを列挙し権威主義国家に対する民主主義国家の対抗姿勢を強調した。 一方、経済や社会政策でも「世論に耳を傾ける民主的な国家ほど21世紀に入ってから経済成長が低迷し民主主義国家の優位性が揺らいでいる」(成田悠輔エール大助教授)と指摘されるなど、民主主義国家は大きな壁に直面しているように見える。こうした中、近年の民主主義国家では、半導体など産..
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ikuo-horigome
2021-09-30T16:57:59+09:00
コロナウイルスへの対応でも民主主義国家よりも専制主義や権威主義の国家の方が抑え込みに成功しているとする見方もある。権威主義国家ではロックダウン(都市封鎖)や個人の行動の規制が容易で、効率的にコロナ対策に効果を上げているとされる。新型コロナ感染症は自由の制約という、民主主義国家のもっとも不得意とする対策が求められた。いつでも人間の自由を制約出来る権威主義国家と違い、民主主義国家では個人の自由との調整を図りつつ、悪戦苦闘の対応が続く。これに対し早稲田大学講師の安中進氏は「民主主義的価値に疑問が投げかけられる中、コロナの死者数などデータの透明性を考慮すると権威主義国家の優位性は認められない」「政治体制の優劣を断定的に判断することは出来ない」とする(中央公論9月号)。そして民主主義や自由は、人間社会が長い政治的闘争をへて確立してきた理念であり、不用意に貶めることがあってはならない、と指摘する。
こうした中、6月に英国で開催されたG7サミット(先進7カ国首脳会議)はG7に疑義を唱えたトランプ時代から再びアメリカが復帰し首脳宣言が発表された。宣言は専制主義に対する民主主義の勝利のための努力と団結の必要性をうたった。また気候変動問題や途上国へのコロナワクチン供給問題などとともに、経済力や軍事力でアメリカに迫る大国になった中国に対しては、新疆ウイグル自治区の人権問題、香港の自治と自由の抑圧などを列挙し権威主義国家に対する民主主義国家の対抗姿勢を強調した。
一方、経済や社会政策でも「世論に耳を傾ける民主的な国家ほど21世紀に入ってから経済成長が低迷し民主主義国家の優位性が揺らいでいる」(成田悠輔エール大助教授)と指摘されるなど、民主主義国家は大きな壁に直面しているように見える。こうした中、近年の民主主義国家では、半導体など産業対策やデジタル課税など政府の介入も目立つようになった。コロナ感染症に苦しみつつも民主主義国家は市場メカニズムを重視するレーガン・サッチャー以来の小さな政府路線から転換し、新たな時代に入ったかに見える。日本の自民党総裁選でも岸田総裁は新自由主義からの脱却を訴えた。こうした変化への対応を通じて民主政は試練とたたかい鍛えられて行くものと思われる。人類の貴重な資産である自由と人権を制約する専制主義や権威主義と対抗しつつ、民主政は新たな挑戦の時代を迎えている。
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アダムズ方式
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2021-07-05
総務省は6月25日2020年の国勢調査の速報値を発表した。この結果から22年以降の衆院選で導入する「アダムズ方式」で試算すると小選挙区の定数配分が10増10減となる。比例定数も北陸信越を含めた見直しが行われる。小選挙区は東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知の5都県で10増、地方の10県で10減となる。この調査結果を受け「地方の声を代弁する議員が減少するのは問題だ」と指摘する何人かの与野党議員の談話が報道された。「地方軽視につながる懸念」などと報じたメデイアもあった。だが一票格差を出来る限り人口比に近づけることは法の下の平等を定めた憲法の要請であり、これまでも何度も定数是正が実行されてきた。地方の声を重視する主張を衆院の定数論議に絡めることは、定数是正を否定したり先延ばしする口実を与える危うさを孕んでいる。 衆院では1993年の小選挙区比例代表並立制導入以来、各党の定数削減という人気取り政策もあって3回にわたって定数是正が行われてきた。アダムズ方式による制度は一票の格差の違憲状態をなくすために当時の衆院選挙制度に関する調査会の答申を受けて16年に国会で決定された。これまで衆参の定数論議は最高裁の違憲判決を避けるために、その場凌ぎの対応が繰り返されてきた。16年改正も20年国勢調査の結果まで課題を先送りしたため、今秋行われる総選挙は2倍超の格差を抱えたまま行われる。また18年の参院選挙制度の改正では鳥取島根、徳島高知の合区、埼玉の定数増に加えて合区で溢れる議員救済のため比例に拘束名簿枠を法定した。定数は6も増やし一票格差是正の辻褄合わせをした。国民の批判を避けるため、増員する議員経費に充てるため議員一人毎月7万7千円を返納出来るとする、あきれるばかりの法改正も行った。このように国会議員の定数配分をめぐっては各党や議員の事情や思惑などによって、ねじ曲げられたり、現職議員優遇の対応が繰り返されてきた歴史がある。 こうした経過を見ると、アダムズ方式の導入が地方軽視につながるとする懸念は的外れで、選挙区画定審議会から出される答申を、粛々と法案化して成立することが求められる。一方で、相次ぐ災害や、コロナ対策での知事の皆さんの苦闘ぶりを見ても、大都市への人口集中に対し地方の声を尊重する仕組みを作ることも要請される。これまでも衆参両院の在り方を検討し参院を「地方の府」に作り替えるべきとする主張が多くの識者からなされてきた。世界各国の第..
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ikuo-horigome
2021-07-05T15:00:13+09:00
衆院では1993年の小選挙区比例代表並立制導入以来、各党の定数削減という人気取り政策もあって3回にわたって定数是正が行われてきた。アダムズ方式による制度は一票の格差の違憲状態をなくすために当時の衆院選挙制度に関する調査会の答申を受けて16年に国会で決定された。これまで衆参の定数論議は最高裁の違憲判決を避けるために、その場凌ぎの対応が繰り返されてきた。16年改正も20年国勢調査の結果まで課題を先送りしたため、今秋行われる総選挙は2倍超の格差を抱えたまま行われる。また18年の参院選挙制度の改正では鳥取島根、徳島高知の合区、埼玉の定数増に加えて合区で溢れる議員救済のため比例に拘束名簿枠を法定した。定数は6も増やし一票格差是正の辻褄合わせをした。国民の批判を避けるため、増員する議員経費に充てるため議員一人毎月7万7千円を返納出来るとする、あきれるばかりの法改正も行った。このように国会議員の定数配分をめぐっては各党や議員の事情や思惑などによって、ねじ曲げられたり、現職議員優遇の対応が繰り返されてきた歴史がある。
こうした経過を見ると、アダムズ方式の導入が地方軽視につながるとする懸念は的外れで、選挙区画定審議会から出される答申を、粛々と法案化して成立することが求められる。一方で、相次ぐ災害や、コロナ対策での知事の皆さんの苦闘ぶりを見ても、大都市への人口集中に対し地方の声を尊重する仕組みを作ることも要請される。これまでも衆参両院の在り方を検討し参院を「地方の府」に作り替えるべきとする主張が多くの識者からなされてきた。世界各国の第2院と比較しても特異な参院の在り方をめぐる議論は、主として与野党の参院側の消極姿勢によって前進していない。また一票の格差をめぐって参院の複数の県をまたぐ合区は今後も増え続け地方の議員はますます減少する可能性が高い。アダムズ方式による衆院の選挙区見直しは参院を含めた改革の機会と捉えるべきと思われる。
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100年前の警鐘
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2020-12-19
マックス・ヴェーバーが亡くなって100年の今年、雑誌や新聞で特別企画が相次いだ。共通する問題意識があったらしく岩波と中央公論社はそれぞれ評伝の新書を刊行した。旧版(1980年)の「職業としての政治」(岩波文庫)も佐々木毅氏(元東大総長)の解説を加えて新装出版された。新聞紙上でも姜尚中氏の対談形式などで何度か掲載された。 マックス・ヴェーバーの著作の中でも「職業としての政治」は政治学の古典として、今日でも世界中で幅広く読まれている。マキャヴェリの「君主論」とともに、この2冊は政治家には最低限の必読書とも言われる。私も現職の頃、超党派の議員仲間の「比較政治制度研究会」という勉強会で読後の感想を議論し合った。この勉強会には佐々木先生はじめ先日亡くなられた近現代史の坂野潤治先生やアメリカやヨーロッパ政治の研究者などに出席いただき適切なアドバイスやご指導を仰ぎながら国内外の歴史など幅広く学んだ。ヴェーバー没後100年で様々な企画書などが発刊された今年、当時が懐かしく思い出される。世界中でコロナ感染が猛威を奮っているが、100年前のヴェーバーの死因がスペイン風邪であったことを思うと、何か因縁めいためぐり合わせを感じる。 ヴェーバーの時代、第一次大戦後のドイツはスパルダクス団(ドイツ共産党の前身)による蜂起が失敗し騒然たる状況にあった。特にミュンヘンは「前衛的な学生や知識人の[革命]という誇らしげな名前で飾り立てられた乱痴気騒ぎ」の中にあった。こうした1919年の状況下でヴェーバーが学生たちを前に行った講演の記録が、「職業としての政治」である。以来、世界的な名著として今日まで読まれ続けてきた。ヴェーバーは政治家に求められる資質として情熱、責任感、判断力の三つを上げる。そして「政治とは情熱と判断力を駆使しながら、堅い板に力を込めてじわっじわっと穴をくりぬいていく作業である」と政治家としての資質を厳しく問う。 100年前スペイン風邪は世界中に大きな打撃を与える。当時もマスク着用反対運動などがあった。また世界全体の死亡率に比べ日本の死亡率が低いなど今日と相似する。第一次大戦後、国際連盟設立、今日の日本国憲法9条の原型とも言うべき不戦条約を締結するなど、世界は平和への歩みを進める。だが自国第一のブロック経済政策などが対立を招き数年にしてヒットラーの台頭を許す結果となる。米大統領選での国民の分断やヨーロッパでのポピュリズム政治の蔓延な..
未分類
ikuo-horigome
2020-12-19T09:13:01+09:00
マックス・ヴェーバーの著作の中でも「職業としての政治」は政治学の古典として、今日でも世界中で幅広く読まれている。マキャヴェリの「君主論」とともに、この2冊は政治家には最低限の必読書とも言われる。私も現職の頃、超党派の議員仲間の「比較政治制度研究会」という勉強会で読後の感想を議論し合った。この勉強会には佐々木先生はじめ先日亡くなられた近現代史の坂野潤治先生やアメリカやヨーロッパ政治の研究者などに出席いただき適切なアドバイスやご指導を仰ぎながら国内外の歴史など幅広く学んだ。ヴェーバー没後100年で様々な企画書などが発刊された今年、当時が懐かしく思い出される。世界中でコロナ感染が猛威を奮っているが、100年前のヴェーバーの死因がスペイン風邪であったことを思うと、何か因縁めいためぐり合わせを感じる。
ヴェーバーの時代、第一次大戦後のドイツはスパルダクス団(ドイツ共産党の前身)による蜂起が失敗し騒然たる状況にあった。特にミュンヘンは「前衛的な学生や知識人の[革命]という誇らしげな名前で飾り立てられた乱痴気騒ぎ」の中にあった。こうした1919年の状況下でヴェーバーが学生たちを前に行った講演の記録が、「職業としての政治」である。以来、世界的な名著として今日まで読まれ続けてきた。ヴェーバーは政治家に求められる資質として情熱、責任感、判断力の三つを上げる。そして「政治とは情熱と判断力を駆使しながら、堅い板に力を込めてじわっじわっと穴をくりぬいていく作業である」と政治家としての資質を厳しく問う。
100年前スペイン風邪は世界中に大きな打撃を与える。当時もマスク着用反対運動などがあった。また世界全体の死亡率に比べ日本の死亡率が低いなど今日と相似する。第一次大戦後、国際連盟設立、今日の日本国憲法9条の原型とも言うべき不戦条約を締結するなど、世界は平和への歩みを進める。だが自国第一のブロック経済政策などが対立を招き数年にしてヒットラーの台頭を許す結果となる。米大統領選での国民の分断やヨーロッパでのポピュリズム政治の蔓延など民主主義が問われる状況を見ると100年前の歴史をしっかりと見据える必要性を痛感する。おそらくは今年ヴェーバーを取り上げ出版した各社の編集部や作者も同じ問題意識があったものと思われる。国民請けする政策、人気取り政策に偏りがちな日本の中央地方の政治家にもヴェーバーの警鐘を厳しく受け止めて欲しいものである。
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新冷戦時代の日本外交
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2020-10-08
45年体制と言われる戦後世界秩序は、圧倒的な経済的、軍事的優位を背景にしたアメリカの主導によって維持されてきた。ブレトンウッズ体制(1944年の通貨金融の国際合意)のもとドルは基軸通貨として機能を果たし、市場経済と自由貿易体制が多くの国に繁栄と安定をもたらした。そしてソ連の崩壊により冷戦も終決し世界は平和と安定に向かうものと期待された。だが近年、アメリカの相対的地位が低下する一方、躍進目覚ましい中国の挑戦が目立ち国際秩序は不安定感を増している。覇権を競う米中新冷戦時代の始まりと言われる。 中国は目覚ましい経済発展にも拘らず共産党一党体制を強化し内外で力による強行路線を貫いている。経済では社会主義市場経済体制を推し進め、市場支配力を拡大する。南シナ海では軍事力による国際法への挑戦を続ける。尖閣諸島でも日本領海への侵入を繰り返す。香港やウイグル自治区で自由や人権の抑圧が繰り返される。ニクソン大統領の訪中以来、アメリカ始め西側諸国が抱いてきた「経済が豊かになると民主主義体制に移行して行く」という希望的観測はどうやら幻想に終わりそうだ。さらに、生産拠点としての存在から膨大な人口を抱えた消費市場として存在感を増し、世界中の企業が中国市場を目指して凌ぎを削る。その巨大市場を背景に「戦狼外交」と呼ばれる力の外交を繰り返す。軍事力の強化にも力を注ぎ空母や核兵器に加え宇宙空間やサイバー分野でも軍事強国の道を歩む。こうした中国に対してアメリカはじめオーストラリア、カナダ、欧州各国などに警戒感が拡がりつつある。覇権を競う米中の争いはアメリカによるファーウェイ排除などデジタルを最前線として激しさを増す。 世界には、環境問題や地球温暖化、そして感染症のワクチン供給など国際協力で解決しなければならない課題は山積している。対立と覇権争いから、大国同士が協調して共通の課題に取り組む世界秩序を作り出して欲しいものだが、期待に反して新冷戦は長引きそうである。 日本としては、米国とは同盟を深め国際協調路線に引き戻すこと。そして最大の貿易相手国になった中国とは、民主、自由、、人権、など普遍的価値を重んじることこそ中国の利益であることを中国自身が認識できるような環境をねばり強く働きかけて行くこと、が外交の基本的立場になるのではないだろうか。長い道のりではあるが協調と平和の国際秩序形成に向けて日本の果たす役割は大きい。
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ikuo-horigome
2020-10-08T10:00:46+09:00
中国は目覚ましい経済発展にも拘らず共産党一党体制を強化し内外で力による強行路線を貫いている。経済では社会主義市場経済体制を推し進め、市場支配力を拡大する。南シナ海では軍事力による国際法への挑戦を続ける。尖閣諸島でも日本領海への侵入を繰り返す。香港やウイグル自治区で自由や人権の抑圧が繰り返される。ニクソン大統領の訪中以来、アメリカ始め西側諸国が抱いてきた「経済が豊かになると民主主義体制に移行して行く」という希望的観測はどうやら幻想に終わりそうだ。さらに、生産拠点としての存在から膨大な人口を抱えた消費市場として存在感を増し、世界中の企業が中国市場を目指して凌ぎを削る。その巨大市場を背景に「戦狼外交」と呼ばれる力の外交を繰り返す。軍事力の強化にも力を注ぎ空母や核兵器に加え宇宙空間やサイバー分野でも軍事強国の道を歩む。こうした中国に対してアメリカはじめオーストラリア、カナダ、欧州各国などに警戒感が拡がりつつある。覇権を競う米中の争いはアメリカによるファーウェイ排除などデジタルを最前線として激しさを増す。
世界には、環境問題や地球温暖化、そして感染症のワクチン供給など国際協力で解決しなければならない課題は山積している。対立と覇権争いから、大国同士が協調して共通の課題に取り組む世界秩序を作り出して欲しいものだが、期待に反して新冷戦は長引きそうである。
日本としては、米国とは同盟を深め国際協調路線に引き戻すこと。そして最大の貿易相手国になった中国とは、民主、自由、、人権、など普遍的価値を重んじることこそ中国の利益であることを中国自身が認識できるような環境をねばり強く働きかけて行くこと、が外交の基本的立場になるのではないだろうか。長い道のりではあるが協調と平和の国際秩序形成に向けて日本の果たす役割は大きい。
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チャレンジ精神は甦るか
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2020-07-11
政府は8日経済財政諮問会議に示した「骨太の方針」で「日本が世界から取り残され埋没しかねない」と危機感をあらわにした。科学技術など多くの分野で、日本の国際的地位の低下が指摘されて久しい。コロナ危機への対応でも日本のデジタル化への遅れが明らかになった。一律給付金や助成金などの事務作業のもたつきに加え、医療現場でのオンライン診療、教育現場でのオンライン授業など諸外国に比べて立ち遅れが指摘された。科学技術立国を誇っていた日本の地位の低下はかねてから懸念されていた。研究論文数で米中両国に大きく後れを取り、世界大学ランキングでも100位以内は東大と京大のみという状況だ。最先端技術で凌ぎを削る半導体分野でも、かつて世界のベスト10の上位を独占していた日本企業は姿を消しトップランナーの地位から完全に脱落した。一人当たりGDPでもかつての世界4位から26位まで後退した。 後退の要因は数々指摘される。チャレンジ精神を失った活力の衰えがその一つとされる。80年代後半には昭和時代に急成長した経済に自信を持ち、日本中が繁栄を謳歌しバブル経済に踊った。だがこの過程で努力や勤勉の尊さを失って行った。そして90年代始めのバブル崩壊のショックを受けた日本企業はその後遺症を引きずる。臆病になり過ぎ、投資や賃上げに資金を回さず、ひたすらため込み内部留保を積み上げることに注力した。結果、リスクを取って新しい投資を避けるあまり、新製品や新サービスを産み出せなくなった。バブル後遺症のチャレンジ精神の喪失こそが停滞の要因の一つとされる。 この傾向は官の世界にも波及し、チャレンジする精神、課題に立ち向かう姿勢が官僚たちから失われていったと指摘される。明治以来、優秀な官僚たちはエリートであり続け日本の発展を支えてきた。大蔵省はじめ各省庁には日本の頭脳が集まり政策の立案、実行に手腕を発揮してきた。城山三郎さんの小説「官僚たちの夏」に生き生きと描かれているように、彼らは総じて「国を背負う気概」に燃えていた。優秀なエリート官僚から何人もの総理大臣はじめ有力な政治家が数多く生まれ、経済界、学界などにも多くの人材を輩出した。だが平成の30年間で彼らの中に気概みたいなものが薄れ、国家国民よりも省益や組織防衛優先の姿勢が目立つようになったとされる。 このように官民から進取の精神が失われ、国民全体にも安全指向が強まりチャレンジ精神が喪失したことが国際的地位の低下の要因とされる..
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ikuo-horigome
2020-07-11T10:26:28+09:00
後退の要因は数々指摘される。チャレンジ精神を失った活力の衰えがその一つとされる。80年代後半には昭和時代に急成長した経済に自信を持ち、日本中が繁栄を謳歌しバブル経済に踊った。だがこの過程で努力や勤勉の尊さを失って行った。そして90年代始めのバブル崩壊のショックを受けた日本企業はその後遺症を引きずる。臆病になり過ぎ、投資や賃上げに資金を回さず、ひたすらため込み内部留保を積み上げることに注力した。結果、リスクを取って新しい投資を避けるあまり、新製品や新サービスを産み出せなくなった。バブル後遺症のチャレンジ精神の喪失こそが停滞の要因の一つとされる。
この傾向は官の世界にも波及し、チャレンジする精神、課題に立ち向かう姿勢が官僚たちから失われていったと指摘される。明治以来、優秀な官僚たちはエリートであり続け日本の発展を支えてきた。大蔵省はじめ各省庁には日本の頭脳が集まり政策の立案、実行に手腕を発揮してきた。城山三郎さんの小説「官僚たちの夏」に生き生きと描かれているように、彼らは総じて「国を背負う気概」に燃えていた。優秀なエリート官僚から何人もの総理大臣はじめ有力な政治家が数多く生まれ、経済界、学界などにも多くの人材を輩出した。だが平成の30年間で彼らの中に気概みたいなものが薄れ、国家国民よりも省益や組織防衛優先の姿勢が目立つようになったとされる。
このように官民から進取の精神が失われ、国民全体にも安全指向が強まりチャレンジ精神が喪失したことが国際的地位の低下の要因とされる。打開する切り口は、やはり政治だ。長期に及んだ安倍政権は官邸中心の安全指向の政権運営が特徴のように見える。与野党の国会論戦も当面の課題が中心だ。衆院任期満了が迫り解散の話題が飛び交う中、人気取り的な短期思考でなく、将来課題に真正面から取り組むことが今後の政治には必要だ。与野党を問わず、問題意識を共有して中長期課題に取り組みことが求められる。企業や官僚が輝きを取り戻し日本再生を果たして行くために政治のリーダーシップを期待したいものである。
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ポピュリズムの克服
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2020-04-21
「一つの妖怪がヨーロッパにあらわれている。…共産主義の妖怪が。」1848年マルクスとエンゲルスによる「共産党宣言」の書き出しの有名な一節である。今日「一つの妖怪が世界にあらわれている。ポピュリズムという妖怪が」とでも表現したい勢いでポピュリズムが世界を覆っている。アメリカにトランプ大統領が誕生し伝統的な共和党の政策を捨て、あからさまな「自国第一主義」を推進する。イギリスでは保守党主導でブレグジットが実現した。イタリアでは左派の「五つ星運動」と極右の「同盟」による連立政権が実現している。その他多くの国でポピュリズム政党が伸長し、世界中にポピュリズムの風が吹きまくる。それは伝統的な「保守」や「リベラル」からも、イデオロギーの対立する左右両派からも生まれている。ポピュリズム政治は古代から批判されその危うさが指摘されてきた。古代ローマ社会では、食料と娯楽を提供する愚民政策でローマ市民が政治的に盲目に置かれていると「パンとサーカス」の諷刺詩として今日に伝わる。20世紀になってからも、当時ワイマール憲法のもと世界でもっとも民主的と言われたドイツで、ポピュリズム政治家ヒトラーが巧みな演説と宣伝で権力を掌握し悲劇へと突き進む。われわれは少し過去を紐解くだけで、ポピュリズムの危険性を教えてくれる多くの歴史を知ることができる。ポピュリズムは世界的に進むグローバル化に対し「自国第一主義」を唱える。総じて経済政策では政府の関与を小さくするよりは「大きな政府」による国の積極的関与を志向する。MMT(現代貨幣理論)を肯定し、財源は税負担を避け国債で賄い大衆の支持を狙う。いつの時代も単純明快で歯切れのよい主張で国民請けを狙う。さらにヨーロッパ各国の反移民、アメリカのメキシコとの壁、ナチス時代の反ユダヤなど排外主義で敵を作り攻撃する手法が共通する。そこには、人間は不完全なものとし斬新的な改革を訴えてきた寛容で折り目正しい伝統的な保守主義の姿は見られない。社会的公正や多様性を重視するリベラリズムとも無縁である。日本は、急進的ポピュリズムは見られず安定した政治が続くと評価されてきた。しかし「れいわ新選組」や「NHKから国民を守る党」にポピュリズムの台頭を懸念する指摘もある(「Voice」4月号「日本の生存戦略」松井孝治慶大教授)。だが両党にかぎらず、伝統的保守政党やリベラルを自認する日本の政党に、ポピュリズム政策の競い合いという傾向が強くなっていな..
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ikuo-horigome
2020-04-21T15:56:26+09:00
ポピュリズムは世界的に進むグローバル化に対し「自国第一主義」を唱える。総じて経済政策では政府の関与を小さくするよりは「大きな政府」による国の積極的関与を志向する。MMT(現代貨幣理論)を肯定し、財源は税負担を避け国債で賄い大衆の支持を狙う。いつの時代も単純明快で歯切れのよい主張で国民請けを狙う。さらにヨーロッパ各国の反移民、アメリカのメキシコとの壁、ナチス時代の反ユダヤなど排外主義で敵を作り攻撃する手法が共通する。そこには、人間は不完全なものとし斬新的な改革を訴えてきた寛容で折り目正しい伝統的な保守主義の姿は見られない。社会的公正や多様性を重視するリベラリズムとも無縁である。
日本は、急進的ポピュリズムは見られず安定した政治が続くと評価されてきた。しかし「れいわ新選組」や「NHKから国民を守る党」にポピュリズムの台頭を懸念する指摘もある(「Voice」4月号「日本の生存戦略」松井孝治慶大教授)。だが両党にかぎらず、伝統的保守政党やリベラルを自認する日本の政党に、ポピュリズム政策の競い合いという傾向が強くなっていないか。突然のコロナ危機は、大恐慌から戦争へと突き進んだ20世紀前半の歴史と重なる。コロナ危機後、国際社会は協調して混乱や停滞から社会や経済の再生に立ち向かわなければならない。政党や政治家は大切な局面にあることを自覚し、ポピュリズム政治が蔓延する世界と渡り合ってほしいものである。
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米大統領選と格差問題
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
今秋アメリカ大統領選が行われる。3月初旬のスーパーチューズデーを皮切りに本格的な選挙戦を迎える。共和党はトランプ氏の再選を狙い、民主党は大勢の候補者がひしめいて先行きは見通せない状況だ。トランプ大統領は就任以来、アメリカ第一主義を強力に推し進めてきた。対する民主党もポピュリズム左派と称されるサンダース氏など多くの候補者が富裕税導入など大衆受けを狙った政策を前面に打ち出し対抗する。こうした「アメリカ第一主義」はアメリカの国際的地位を著しく低下させてきた。アメリカの国際政治学者で知日派としても知られるジョセフ・ナイ氏は、経済力や軍事力などハード面だけでなく、アメリカの魅力であった民主主義や人権、文化などソフトパワーが損なわれていると指摘する。そして「傲慢」「他者の意見に無配慮」「狭い国益観念」などがソフトパワーを損なう要因だと憂慮する。だが大統領選の序盤を見ると、減税や関税措置などで岩盤支持層に配慮するトランプ氏と、大衆受けを狙う民主党候補の間で、スキャンダル追及やポピュリズム政策の競い合いが続く。アメリカが世界のリーダー国として保持してきた自由と人権、民主政、開かれた自由貿易などの理念は後ろに追いやられた格好だ。 冷戦終結後の30年間、ヒト、モノ、カネの自由な移動によるグローバリズムによって経済の発展が図られてきた。一方、中下層の所得階層が経済成長から取り残された結果、多くの国で深刻な格差社会が生み出されて社会の分断を招く現象が起こった。低所得層の不満はより低賃金の移民や難民などに向かう。社会への不満、将来への不安を抱く層によって、多文化の共生や寛容の理念などが否定され、自国第一、反移民などの風潮が蔓延した。アメリカに限らず欧州各国にも拡がった格差社会は、多くの国でナショナリズムや保護主義を訴えるポピュリズム政党が伸長し政治の不安定化を招いた。安定した政治が行われているとされる日本でも格差や分断の問題が深刻化してきたと指摘する著作やリポートが近年目立つ。また財政赤字を抱えるにも拘わらず給付など巨額な財政支出を行うという一種のポピュリズム政治で格差問題が先送りされているとも言われる。 格差社会の対応策として、各国が協調よりも自己主張を強める傾向に対し、第一次や第二次世界大戦前と酷似するとする指摘が最近多い。各国の保護主義や閉鎖的なブロック化の経済政策が二つの大戦前の共通した経済状況だ。格差解決は各国が壁を築いたりポ..
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ikuo-horigome
2020-01-10T16:45:10+09:00
冷戦終結後の30年間、ヒト、モノ、カネの自由な移動によるグローバリズムによって経済の発展が図られてきた。一方、中下層の所得階層が経済成長から取り残された結果、多くの国で深刻な格差社会が生み出されて社会の分断を招く現象が起こった。低所得層の不満はより低賃金の移民や難民などに向かう。社会への不満、将来への不安を抱く層によって、多文化の共生や寛容の理念などが否定され、自国第一、反移民などの風潮が蔓延した。アメリカに限らず欧州各国にも拡がった格差社会は、多くの国でナショナリズムや保護主義を訴えるポピュリズム政党が伸長し政治の不安定化を招いた。安定した政治が行われているとされる日本でも格差や分断の問題が深刻化してきたと指摘する著作やリポートが近年目立つ。また財政赤字を抱えるにも拘わらず給付など巨額な財政支出を行うという一種のポピュリズム政治で格差問題が先送りされているとも言われる。
格差社会の対応策として、各国が協調よりも自己主張を強める傾向に対し、第一次や第二次世界大戦前と酷似するとする指摘が最近多い。各国の保護主義や閉鎖的なブロック化の経済政策が二つの大戦前の共通した経済状況だ。格差解決は各国が壁を築いたりポピュリズム政策を選択することで解決されるものではないことは二度の大戦の教訓だ、即効薬は期待せず地道な社会改革の積み重ねが大切なのではないか。そして地球温暖化や核軍縮などグローバル課題にも敢然と取り組むべき時ではないだろうか。アメリカ大統領選は、再び世界から信頼され尊敬される誇り高きアメリカを取り戻す、未来に一筋の光をもたらすものであって欲しいものである。
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国会改革の必要性
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2019-12-09
「桜国会」と呼ばれた臨時国会が閉幕した。日米貿易協定の承認などが主なテーマの国会だったはずだが、政治とカネをめぐる2閣僚の辞任や、大学入試の英語民間試験の導入見送りに続いて「桜を見る会」が焦点になり「桜国会」などと呼ばれた。招待客の基準が不明確で名簿も破棄したという節度を欠いた政府の対応は批判されて当然だ。政府側は野党の追及に納得の行く答弁が出来ず時間切れで何とか国会を乗り切ったという印象だ。 国民目線からすると政権のいい加減さを質して欲しいという感情がある一方、スキャンダル追及重視に明け暮れる国会はこれで良いのだろうか、国の在り方や直面する課題の議論がお座なりになっているのではないか、という感想を抱いた国会だった。欧米の議会には見られない日本の議会運営の慣例がこうした事態をもたらしている要因とされる。読売新聞特別編集委員の橋本五郎氏は国会審議の形骸化の現状は議院内閣制の危機で国会改革の必要性を強調する(12月7日読売新聞)。そして悪しき慣例の一つの「与党の事前審査制」の廃止を主張する。政府提出の法案は与党によって事前に審査・承認され政府は与党の党議決定を経て閣議決定する。この段階で与党の法案審議は終わっており、後は法案をいかに通過させるかが残るだけになる。一方、野党にとっては国会こそが活躍の舞台だ。ところが国会論議で修正などを迫っても党議決定した与党が応じることはほとんどない。したがって野党が存在を際立たせるにはスキャンダル追及こそが格好の材料となる。こうした実態を打破し国会審議の活性化を図るため、平成の初期の頃から民間の有識者で作る「民間政治臨調」などから事前審査・承認慣行の廃止が提言されてきたが今もって実現していない。国会の在り方が問われるスキャンダル応酬の「桜国会」ではなかったか。 もう一つは「会期不継続原則」だ。日本の国会は常会や臨時会が設定され閉会中審査の手続きをとったものを除き、会期不継続の原則により審議未了の案件は継続せず廃案になる。これが国会運営をスケジュール重視の駆け引きにしている要因だ。これまでは会期末などで野党が審議拒否や不信任案などで会期不継続の原則を抵抗手段に使うことが常態化していたが、今回は「桜を見る会」の追及を回避するため与党側が時間切れを狙った印象だ。いずれにしても「会期不継続の原則」が国民にはわかりにくい国対政治の温床になってきた。会期制の抜本改革は憲法改正が必要なため通常国..
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ikuo-horigome
2019-12-09T17:24:52+09:00
国民目線からすると政権のいい加減さを質して欲しいという感情がある一方、スキャンダル追及重視に明け暮れる国会はこれで良いのだろうか、国の在り方や直面する課題の議論がお座なりになっているのではないか、という感想を抱いた国会だった。欧米の議会には見られない日本の議会運営の慣例がこうした事態をもたらしている要因とされる。読売新聞特別編集委員の橋本五郎氏は国会審議の形骸化の現状は議院内閣制の危機で国会改革の必要性を強調する(12月7日読売新聞)。そして悪しき慣例の一つの「与党の事前審査制」の廃止を主張する。政府提出の法案は与党によって事前に審査・承認され政府は与党の党議決定を経て閣議決定する。この段階で与党の法案審議は終わっており、後は法案をいかに通過させるかが残るだけになる。一方、野党にとっては国会こそが活躍の舞台だ。ところが国会論議で修正などを迫っても党議決定した与党が応じることはほとんどない。したがって野党が存在を際立たせるにはスキャンダル追及こそが格好の材料となる。こうした実態を打破し国会審議の活性化を図るため、平成の初期の頃から民間の有識者で作る「民間政治臨調」などから事前審査・承認慣行の廃止が提言されてきたが今もって実現していない。国会の在り方が問われるスキャンダル応酬の「桜国会」ではなかったか。
もう一つは「会期不継続原則」だ。日本の国会は常会や臨時会が設定され閉会中審査の手続きをとったものを除き、会期不継続の原則により審議未了の案件は継続せず廃案になる。これが国会運営をスケジュール重視の駆け引きにしている要因だ。これまでは会期末などで野党が審議拒否や不信任案などで会期不継続の原則を抵抗手段に使うことが常態化していたが、今回は「桜を見る会」の追及を回避するため与党側が時間切れを狙った印象だ。いずれにしても「会期不継続の原則」が国民にはわかりにくい国対政治の温床になってきた。会期制の抜本改革は憲法改正が必要なため通常国会の延長などを通じて改善すべきと識者などから指摘されて久しい。こうした点に限らず、予算委員会や党首討論の在り方など「桜国会」は多くの改革の必要性を感じさせる国会だった。国会は機械的な議案の通過機関でなく「言論の府」である。与野党は国会審議の活性化、透明性など国会改革の課題について真剣に取り組んで欲しいものである。
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憲法論議
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2019-09-22
安倍総理は内閣改造と党役員人事を行い「憲法改正に向けた議論を力強く推進する」と強調した。衆院の憲法調査会の与野党のメンバーも改憲を何度も実行しているドイツなどへ海外視察に出かけたと報じられており国会での改憲論議が注目される。これまで改憲派は現在の憲法は押しつけ憲法であり、自主憲法制定が必要だとしてきた。対する護憲派は世界に先駆けた誇るべき憲法を守るとして、長らく国民の分断が続いてきた。9条以外の参院改革など統治機構、私学助成など教育改革、緊急事態条項などの議論を含めて対立を克服する方向に議論が進むことは可能だろうか。 ところで今年、憲法関係で新聞や総合雑誌の書評にも取り上げられ話題になった2冊の本がある。1冊は加藤典洋氏の「9条入門」(創元社)だ。刊行直後に著者が亡くなられこの本が絶筆となった。日本の終戦処理に関し11か国で構成されていた極東委員会は天皇を免罪することに反対だったが、占領軍の最高責任者マッカーサー元帥は天皇を利用して占領統治を出来るだけ有利に進めようと考えていた。憲法9条の戦争放棄条項も、昭和天皇の免罪を各国に認めさせるために作られたものとする。また大統領選出馬を狙っていたマッカーサーのアメリカ本国との駆け引きなど憲法制定の過程が分析される。そして成立過程から世界に先駆け国連による「集団安全保障体制」に主権の一部を委ねるのが9条の本旨であったことが説明される。その後、朝鮮戦争や東西冷戦で集団安全保障体制は実現されなかった結果、護憲派と改憲派の対立が続くようになったが集団安全保障を志向する大切さが主張される。 もう1冊は篠田英朗氏の「憲法学の病」(新潮新書)だ。日本国憲法には「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」の三大原理で構成されているという見解や、平和主義についても国際法を凌駕して唯一無二の世界最先端の規範だという見解などを批判する。日本の憲法学の主流をなしてきた宮沢俊義、芦部信喜氏等のこうした憲法解釈に異議を唱える。日本国憲法は1928年の不戦条約、1945年の国連憲章などの国際法規を前提に作られたもので国際法規範を遵守する意図を表現していると考えるのが妥当とする。 当然、2冊の本の評価については異論もあるが、、憲法について従来の通説とは異なる見解に触れることであらためて考えさせてくれる書である。憲法改正が現実の政治課題になりつつあるいま、いわゆる「押しつけ論」の実際の経過、いわゆる「..
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ikuo-horigome
2019-09-22T15:08:44+09:00
ところで今年、憲法関係で新聞や総合雑誌の書評にも取り上げられ話題になった2冊の本がある。1冊は加藤典洋氏の「9条入門」(創元社)だ。刊行直後に著者が亡くなられこの本が絶筆となった。日本の終戦処理に関し11か国で構成されていた極東委員会は天皇を免罪することに反対だったが、占領軍の最高責任者マッカーサー元帥は天皇を利用して占領統治を出来るだけ有利に進めようと考えていた。憲法9条の戦争放棄条項も、昭和天皇の免罪を各国に認めさせるために作られたものとする。また大統領選出馬を狙っていたマッカーサーのアメリカ本国との駆け引きなど憲法制定の過程が分析される。そして成立過程から世界に先駆け国連による「集団安全保障体制」に主権の一部を委ねるのが9条の本旨であったことが説明される。その後、朝鮮戦争や東西冷戦で集団安全保障体制は実現されなかった結果、護憲派と改憲派の対立が続くようになったが集団安全保障を志向する大切さが主張される。
もう1冊は篠田英朗氏の「憲法学の病」(新潮新書)だ。日本国憲法には「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」の三大原理で構成されているという見解や、平和主義についても国際法を凌駕して唯一無二の世界最先端の規範だという見解などを批判する。日本の憲法学の主流をなしてきた宮沢俊義、芦部信喜氏等のこうした憲法解釈に異議を唱える。日本国憲法は1928年の不戦条約、1945年の国連憲章などの国際法規を前提に作られたもので国際法規範を遵守する意図を表現していると考えるのが妥当とする。
当然、2冊の本の評価については異論もあるが、、憲法について従来の通説とは異なる見解に触れることであらためて考えさせてくれる書である。憲法改正が現実の政治課題になりつつあるいま、いわゆる「押しつけ論」の実際の経過、いわゆる「世界最先端憲法」論と国際法との関連などを点検しながら、改憲派と護憲派の対立を止揚して行けるような議論の質が高まることを期待したいものである。
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参院選を終えて
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2019-07-22
参院選が終わった。注目された与野党の議席数は自民、公明両党が安定多数を維持する結果に終わった。選挙中、社会保障政策など国政の幅広い分野にわたって論戦が繰り広げられた。だが参院は何のために存在するのか、衆院と異なるどんな役割が期待されているのか、そのためにどう改革するのか等々、問われている本質的な問題を訴える政党や候補者が見当たらなかったことは残念だった。昨年もこの欄で私見を述べたが、こうした点はこれまで繰り返し指摘されてきた。例えば「参院、真の改革へ待ったなし」で中北浩爾一橋大教授は参院が自己改革を怠れば有権者に見放される日は遠くない、と警告する(7/14信毎)。昨年の国会で、今回の選挙の合憲性を確保するため鳥取・島根、徳島・高知を合区するなどの一票格差是正のための公選法改正が行われた。この改正は定数の6増に加え特定枠導入など理念なき小手先対応として世の非難を浴びた。さらに先の国会では議員歳費を返上出来る法案を可決した。今後3年間に限り議員一人月額7万7千円を返納できる、これを定数増に伴う経費増に充当しようとするものだ。返納するかどうかは議員の自主的判断に委ねるという。その場凌ぎのあきれるばかりの対応である。国会議員の定数、選挙制度の仕組みは民主主義下の議会制度の基本中の基本だ。参院が二院制の趣旨に基づく改革を怠ってきたこれまでのツケが、理念なき一時凌ぎの法案に立ち至ったことは明らかだ。90年代の政治改革の際も、参院は他人事のように「我、関せず」で過ごし衆院の改革だけで終わった。だが一極集中傾向の人口動態からして今後もいくつかの合区が迫られる事態が想定され、現行の都道府県代表制の維持は困難になることが想定される。参院は制度発足当初から、地域の声を代表する都道府県単位の選挙区制度で「地方の府」として、合わせて全国単位の選挙制度で有識者や職能代表を選ぶ多様な民意を反映する「良識の府」としての機能が期待された。衆院のカーボンコピーの参院や「政局の府」の参院は不要だ。地方の府、良識の府として本来の機能を発揮するところに参院の存在価値がある。 「地方の府」として参院を位置づけ、公職選挙法を改正し都道府県から議員を選出する選挙制度を実現することは憲法理念に反しない、とする見解は前出の中北論文はじめ多くの識者から論じられてきた。例えば自治省出身で福井県知事になった西川一誠氏は憲法制定時のGHQとのやり取りの立法経過、そして昭..
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ikuo-horigome
2019-07-22T14:08:45+09:00
「地方の府」として参院を位置づけ、公職選挙法を改正し都道府県から議員を選出する選挙制度を実現することは憲法理念に反しない、とする見解は前出の中北論文はじめ多くの識者から論じられてきた。例えば自治省出身で福井県知事になった西川一誠氏は憲法制定時のGHQとのやり取りの立法経過、そして昭和58年、平成26年、28年の最高裁大法廷判決を引用し、憲法改正がなくも法律改正で都道府県代表制が可能と結論づけている(中央公論2018・5月号)。参院は、こうした見解も参考に自らの改革に躊躇なく取り組むべきである。今回の選挙は安倍政権の信任や消費増税の可否が問われた。だが参院改革を議論せず先送りが続くと、有権者から参院不要論、世界の多くの国で採用している一院制論が沸き起こるかも知れないことを心すべきと思われる。
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欧米政治の異変に思う
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2019-05-30
欧州議会選挙(EU)でEU支持派が過半数を維持したがポピュリズム勢力が勢いを増す一方、これまでの政権を担ってきた政党が軒並み試練に立たされ欧州政治の異変は収まりそうにない。イギリスでは長年にわたって政権を競い合ってきた保守党、労働党の二大政党がEU離脱を掲げる「ブレグジット党」に押され支持率トップの座を奪われている。ドイツではこれも長年政権を競い合ったきたCDU(キリスト教民主同盟)とSPD(社会民主党)に対し反移民・反EUの「ドイツのための選択肢(AID)」の台頭が著しい。フランスではルペン党首率いる極右の「国民連合」がマクロン氏の与党に拮抗している。イタリアでも連立政権を樹立した極右と極左の「五つ星運動」がトップの座を占めた。スペインなど他の欧州諸国でも同様な現象が起っており、これまで長年政権を担ったきた既成政党は困難な局面に遭遇していることが今度の選挙を通じて鮮明になった。そして大統領選の前哨戦が始まっているアメリカでもトランプ政権のアメリカンファースト政策や大型減税など大衆迎合的政策が進行する。対する民主党の大統領選の候補者選びはMMT理論(財政赤字容認の金融理論)などを叫び、共和党以上のポピュリズム的傾向を強めているのが現状だ。 こうした欧米における左右両派によるポピュリズムの高まりは国際社会の大きな不安定要因となりつつある。かつて国際協調を無視し帝国主義の剥き出しの欲望が対立し閉鎖的なブロック経済政策が採られ、取返しのつかない大戦の引き金になった時代状況と重なる。各国の国内世論の対立と分断、そしてそれを克服し切れない政治の混乱は先行きに大きな不安を抱かせ、相互の理解、寛容を前提とした国際政治システムは困難に遭遇している。 さて日本は世界でもっとも政治の安定した国の一つだとされるが言うまでもなく多くの課題も抱えている。日本の近代政治システムは明治初期の板垣退助等の民選議院設立建白書以来、絶えず欧米を範としながら議会制度を確立してきた。平成の政治改革でも欧米型の「政権交代可能な二大政党制」を目指す制度設計が行われてきた。しかしヨーロッパにおける二大政党制は揺らぎ、範とすべき政治システムの存在は危うくなっているのが現状だ。自民党一強と野党の混迷が続く日本政治だが、責任ある政策を提起し絶えざる改革に取り組まなければ、ポピュリズムの台頭を招き、たちまちにして政治の不安定化を招くことを欧米の政治状況は教えている..
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ikuo-horigome
2019-05-30T15:48:29+09:00
こうした欧米における左右両派によるポピュリズムの高まりは国際社会の大きな不安定要因となりつつある。かつて国際協調を無視し帝国主義の剥き出しの欲望が対立し閉鎖的なブロック経済政策が採られ、取返しのつかない大戦の引き金になった時代状況と重なる。各国の国内世論の対立と分断、そしてそれを克服し切れない政治の混乱は先行きに大きな不安を抱かせ、相互の理解、寛容を前提とした国際政治システムは困難に遭遇している。
さて日本は世界でもっとも政治の安定した国の一つだとされるが言うまでもなく多くの課題も抱えている。日本の近代政治システムは明治初期の板垣退助等の民選議院設立建白書以来、絶えず欧米を範としながら議会制度を確立してきた。平成の政治改革でも欧米型の「政権交代可能な二大政党制」を目指す制度設計が行われてきた。しかしヨーロッパにおける二大政党制は揺らぎ、範とすべき政治システムの存在は危うくなっているのが現状だ。自民党一強と野党の混迷が続く日本政治だが、責任ある政策を提起し絶えざる改革に取り組まなければ、ポピュリズムの台頭を招き、たちまちにして政治の不安定化を招くことを欧米の政治状況は教えている。有権者がわがままを言ったり、無理なサービスを政治に求めたりすることが繰り返されれば民主政治は成り立たない。また憎悪や熱狂で課題は解決しないことは歴史の教訓だ。有権者、政治家双方がそのことを自覚して日本の政党政治の健全な発展を目指して欲しいものである。揺らぐ欧米政治を他山の石として自由と民主主義を基調とした政治的価値観や平和と人権を大切にする国として、国際社会において信頼され尊敬される国として存在感を示して行きたいものである。
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平和維持への問いかけ
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2019-03-27
国際政治学者の三浦瑠麗さんが「21世紀の戦争と平和」(新潮社)と題する本を刊行した。新聞各紙の書評欄にも数紙で紹介され話題を呼んでいる。副題には「徴兵制はなぜ再び必要とされているのか」と挑発的なタイトルが付く。だが数年前に「シビリアンの戦争」を出版しデモクラシーが攻撃的になることを指摘した三浦氏は単純に徴兵制の復活を主張しているわけではない。むしろ兵器の高度化が進んだ現在、徴兵制の軍隊は実戦に対応出来ずお荷物になるという認識を持つ。憲法上認められないことも百も承知だ。だが三浦氏は、戦争を抑止し平和を確立するためには、徴兵制によって国民が実際の戦争と犠牲を体感できる仕組みを議論すべきではないか、と問題提起する。 そもそも民主主義社会が高度化すると戦争による犠牲「血のコスト」は少数の職業軍人だけが負担するようになる。すると政治家や一般国民は戦争によってもたらされる犠牲やコストなどを考慮せず、戦争に抑制的な軍の意向を押し切り大義名分を掲げて安易に戦争を選択してしまう。日本の太平洋戦争の過程を見ても、自らは血のコストを負うつもりのない一般国民が好戦的になり声高に邦人保護を訴えていたことが軍部暴走を支えていた。国民が平等に徴兵されるようになったのは最後の2年間ほどで徴兵制が戦争を拡大するというものではなかった、と振り返る。またアメリカのイラク戦争をはじめ近年の戦争や紛争は、こうした「シビリアンの戦争」が多いと指摘する。軍が武力行使に抑制的であるが政治家や一般市民が軍を抑えて不必要な戦争を選択するケースが多いとする。国連による平和維持の仕組みが十分に機能せず、大国アメリカによる抑止力も揺らいでいる情勢の中で、平和を維持して行くためには国民が戦争を自身の問題として捉える必要があるのではないか、そこに確かなシビリアンコントロールと戦争に対する抑制的な考え方が育まれるのではないかと、提起する。2017年のフランス大統領選で当選したマクロン氏は「短期間の兵役義務化」の公約を掲げて当選した。スウェーデンでは2018年平時の徴兵制を復活させている。こうした動きは軍事優先の国家を目指すものではなく、民主主義を強化し戦争を抑止する取り組みだと分析する。 そこで著者は、広い年齢層の平等な徴兵制の検討を提案する。災害対応を想定した訓練や環境問題への対応を含めた国土管理と郷土防衛の予備役にさまざまな世代の国民を持ち回りで召集する、などを例示する..
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ikuo-horigome
2019-03-27T09:40:52+09:00
そこで著者は、広い年齢層の平等な徴兵制の検討を提案する。災害対応を想定した訓練や環境問題への対応を含めた国土管理と郷土防衛の予備役にさまざまな世代の国民を持ち回りで召集する、などを例示する。この徴兵はあくまでも国民の血のコストへの理解を深め、戦争への無責任な賛同を抑え、国家を自分たちで守り作り上げて行く感覚を養うためのものだ。近年、アメリカや欧米各国でのポピュリズム的政治勢力の進出を見ると、自国第一の国民感情に押され安易に開戦が決定されて行く危険性を感じる。「血のコスト」を論じ平和維持を問いかける本書の問いかけは重い。
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改元の年にあたって
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2019-01-20
新元号がスタートする年を迎えた。30年前の昭和から平成へ改元された時期と国内外の状況が転機にあるという点で似通った状況にあるのではないか、と感じられる。 1989年1月7日に平成に改元された年は歴史の曲がり角ともいうべき年であった。ベルリンの壁の崩壊と東欧諸国で相次いだ民主化は東西冷戦の終結をもたらした。中国でも100万人の民主化要求デモが起ったが人民解放軍に鎮圧されるという天安門事件が起った。 日本国内ではリクルート事件で竹下内閣が倒れ日本政治は長く続いた55年体制の崩壊の予兆を示していた。一方、日本経済はバブルの絶頂期にあった。89年末、日経平均株価は史上最高値の38,915円を記録した。狂乱的な土地バブルが起りジャパンマネーが世界を席巻していた。だが90年1月4日の東証の大発会では全面安の展開となりバブル崩壊へと繋がる。 こうした劇的な変化に対応するため平成の前半は「改革の時代」とも言うべき時代であった。その先陣を切ったのは政治改革であった。55年体制を打破する政治の仕組みが議論され、壮絶な権力闘争も展開された。小選挙区比例代表制が導入され55年体制の政治とは大きく様変わりする。それまでの派閥主導の政治から政党の執行部に権力の集中が進み政治主導の政治に転換が進む。野党でも自民党に対抗する二大政党への再編が繰り返されるようになり平成時代に2度非自民政権が誕生する。そして政治改革に続いて、いわゆる橋本行革と呼ばれる統治機構の改革が実行される。首相官邸の機能を強化し中央省庁再編が実行された。さらに地方分権改革や司法制度改革も取り組まれた。財政構造改革、公務員制度改革なども行われた。これらの改革は充分だったのだろうか。新時代のスタートにあたって、その評価を行いながら次の時代の課題に向けて取り組んで行くことが大切と思われる。 改革以後の平成時代後半は根本的課題を先送りする風潮が日本社会を覆った。将来世代にツケを先送りする社会保障制度の改革、財政健全化への取り組み、経済の持続的発展の方策、統治機構改革など、時代の求めている課題は先送りされたままだ。こうした課題から逃げ回り、増税問題に蓋をして社会保障の充実を叫ぶ政治が横行する。希望的観測で有権者に美味しい話が語られる。今問われているのは国民に負担を求め説得する「政治の力量」ではないだろうか。長年、日経新聞の政治記者として活躍された清水真人さんは著書「平成デモクラシー史..
未分類
ikuo-horigome
2019-01-20T09:39:24+09:00
1989年1月7日に平成に改元された年は歴史の曲がり角ともいうべき年であった。ベルリンの壁の崩壊と東欧諸国で相次いだ民主化は東西冷戦の終結をもたらした。中国でも100万人の民主化要求デモが起ったが人民解放軍に鎮圧されるという天安門事件が起った。
日本国内ではリクルート事件で竹下内閣が倒れ日本政治は長く続いた55年体制の崩壊の予兆を示していた。一方、日本経済はバブルの絶頂期にあった。89年末、日経平均株価は史上最高値の38,915円を記録した。狂乱的な土地バブルが起りジャパンマネーが世界を席巻していた。だが90年1月4日の東証の大発会では全面安の展開となりバブル崩壊へと繋がる。
こうした劇的な変化に対応するため平成の前半は「改革の時代」とも言うべき時代であった。その先陣を切ったのは政治改革であった。55年体制を打破する政治の仕組みが議論され、壮絶な権力闘争も展開された。小選挙区比例代表制が導入され55年体制の政治とは大きく様変わりする。それまでの派閥主導の政治から政党の執行部に権力の集中が進み政治主導の政治に転換が進む。野党でも自民党に対抗する二大政党への再編が繰り返されるようになり平成時代に2度非自民政権が誕生する。そして政治改革に続いて、いわゆる橋本行革と呼ばれる統治機構の改革が実行される。首相官邸の機能を強化し中央省庁再編が実行された。さらに地方分権改革や司法制度改革も取り組まれた。財政構造改革、公務員制度改革なども行われた。これらの改革は充分だったのだろうか。新時代のスタートにあたって、その評価を行いながら次の時代の課題に向けて取り組んで行くことが大切と思われる。
改革以後の平成時代後半は根本的課題を先送りする風潮が日本社会を覆った。将来世代にツケを先送りする社会保障制度の改革、財政健全化への取り組み、経済の持続的発展の方策、統治機構改革など、時代の求めている課題は先送りされたままだ。こうした課題から逃げ回り、増税問題に蓋をして社会保障の充実を叫ぶ政治が横行する。希望的観測で有権者に美味しい話が語られる。今問われているのは国民に負担を求め説得する「政治の力量」ではないだろうか。長年、日経新聞の政治記者として活躍された清水真人さんは著書「平成デモクラシー史」(ちくま新書)で平成の政治改革を振り返って「政治家が目の色を変えて激論するのを後にも先にも見たことがない」と感想を述べられている。実際あの時代は政治家が自分の選挙区事情など顧みずに天下国家が論じられた。新元号のスタートする今年は平成のスタートと同じく宿命的な変革期を迎えているように思える。平成改革が冷戦の終結に誘引されたように、米国の覇権が揺らぎ中國の台頭が懸念され、イギリス、フランス、ドイツなどの国々の政情不安が広がる。国際社会の不安定化も平成スタートの年と何となく似た様相だ。政党や政治家には、平成改革を超える、時代に立ち向かう情熱、強い決意と心意気で「目の色を変えて」課題に取り組んで欲しいものである。
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消費増税と経済論戦への期待
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2018-10-22
昭和初期、金解禁と経済不況の責任をめぐり民政党の浜口内閣と野党政友会の間で論戦が行われた。とりわけ1931年(昭和6年)の第59議会での前田中内閣で大蔵大臣を務めた三土忠蔵と時の大蔵大臣井上準之助の国会論戦は、今日でも語り草になっており、時折経済誌などに引用される。当時、浜口内閣は財政緊縮・消費節約が必要だとして官吏の減俸や軍事費の縮減などに取り組んでいた。これに対し三土氏は「政府の見通しの悪さが生産消費の減退、物価の下落、貿易の不振、破産の頻発、失業の続出を招いている」と追及する。また財政悪化の要因についても税収減を通じて公共団体の財政を緊縮したことが原因と指摘した。これに対し井上は「歳出を減らさずに公債を発行し借入金ををして財政緊縮を止めろ、という議論には賛同しかねる」と真正面から反論する。その後、浜口総理が東京駅で襲撃され、後を継いだ若槻内閣も倒れ、政友会犬養内閣が誕生する。大蔵大臣には高橋是清が就任し民政党政権時代の緊縮政策を大転換する。今度は野党に回った井上準之助が真正面から論戦を挑む。この間の経過は城山三郎さんの小説「男子の本懐」に生き生きと描かれている。 さて先頃、安倍総理が来年10月からの消費税引き上げを宣言した。そして野党の多くは直ちに引き上げ反対を表明した。国民目線から見れば、何故今、消費税を引き上げなければならないか、という点をもっと丁寧に分かりやすく説明して欲しい、軽減税率やポイント還元の話ばかりが前に出て、国民生活への影響は少なくしますよ、と言い訳ばかりが目立つ印象だ。今回の消費税率引き上げで国の財政が好転しプライマリーバランスの黒字化は達成されるのか、増え続ける社会保障費への対応はこれで充分なのか、将来ともさらに引き上げは必要ないのか、等々基本的な説明が求められているのではないだろうか。一方、野党の引き上げ反対論も説明が求められる。国民請けを狙った単なる反対では無責任の感はまぬがれない。かつて緊縮政策を進め国民に節約を訴えた民政党は金解禁直後の昭和5年の総選挙で圧勝する。国民は決して必要な負担を否定するわけではないことの歴史の教訓だ。世界中にポピュリズムが吹き荒れる中、国民の声を聴くとともに、国民を説得することも政治に課せられた大切な役割であることの自覚が大切と思われる。 近年、日本政治において経済政策をめぐる骨太の議論が聞かれなくなった、と多くの識者が指摘する。与野党の消費増税への..
未分類
ikuo-horigome
2018-10-22T14:40:40+09:00
さて先頃、安倍総理が来年10月からの消費税引き上げを宣言した。そして野党の多くは直ちに引き上げ反対を表明した。国民目線から見れば、何故今、消費税を引き上げなければならないか、という点をもっと丁寧に分かりやすく説明して欲しい、軽減税率やポイント還元の話ばかりが前に出て、国民生活への影響は少なくしますよ、と言い訳ばかりが目立つ印象だ。今回の消費税率引き上げで国の財政が好転しプライマリーバランスの黒字化は達成されるのか、増え続ける社会保障費への対応はこれで充分なのか、将来ともさらに引き上げは必要ないのか、等々基本的な説明が求められているのではないだろうか。一方、野党の引き上げ反対論も説明が求められる。国民請けを狙った単なる反対では無責任の感はまぬがれない。かつて緊縮政策を進め国民に節約を訴えた民政党は金解禁直後の昭和5年の総選挙で圧勝する。国民は決して必要な負担を否定するわけではないことの歴史の教訓だ。世界中にポピュリズムが吹き荒れる中、国民の声を聴くとともに、国民を説得することも政治に課せられた大切な役割であることの自覚が大切と思われる。
近年、日本政治において経済政策をめぐる骨太の議論が聞かれなくなった、と多くの識者が指摘する。与野党の消費増税への対応を見ると体系的な経済政策よりも小手先の国民請けを狙った手法が目につく。自民党には財政再建派や上げ潮派が存在するが、基本的には「大きな政府」路線で成長の成果を配分する路線を歩んできた。対する野党の多くは年金受給者や農業などに新たな配分を約束するなど自民党よりさらに「大きな政府」路線を掲げてきた。欧米では大きな影響力を持つ「小さな政府」路線は日本では小泉内閣の一時期に見られた程度である。消費増税後に日本はどのような道を選択して行くのであろうか。金融、財政政策や構造改革についても骨太の議論を展開して欲しい。スキャンダル追及だけでなく質の高い経済論戦こそ期待される。消費増税を前に、昭和初期に帝国議会で展開されたような経済論戦が甦ることを期待するのは無理筋だろうか。
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参院の存在を問う
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2018-07-19
参議院の選挙制度改革をめぐって自民党などが提出した公職選挙法改正案は11日参院本会議で可決されたのに続き18日衆院でも与党側の賛成多数で可決された。ただ今回の法案はどうひいき目に見ても納得し難い内容だ。来年夏の参院選から適用しなければ、裁判で一票格差が憲法違反とされる判決が出される可能性が高い。選挙制度の改正には周知期間が必要で、それを考慮するとこの国会での結論が必要だったのだろう。法案の中身は、一票格差是正のため埼玉選挙区を2増する、比例代表に政党の定める候補者順位で当選者を決める「拘束名簿枠」を設け定数を4増する、などだ。どう見ても、その場凌ぎの小手先な対応と言わざるを得ない。とりわけ鳥取・島根、徳島・高知の合区で溢れた議員救済のため拘束名簿の特定枠を導入するなど無節操ぶりにあきれるばかりである。 そもそも13年参院選の一票格差が「違憲状態」とする最高裁判決があって15年の公選法改正で合区を導入した。その際「19年の参院選に向け抜本的見直しを検討し必ず結論を得る」と付則に明記したのではなかったか。読売、朝日、毎日など各紙の社説は一斉批判し、野党はもちろん、自民党の衆院側からも強い懸念の声が出たのは当然だ。 もともと参院制度は憲法制定過程から問題を孕んでいた。GHQから示された憲法原案は一院制だった。日本側の強い要望を受け、GHQも貴族院とは違って国民の選挙で選出される第二院ならば、ということで参院制度が生まれた経過がある。そして憲法43条に「両議院は全国民を代表する選挙された議員で組織する」と規定された。しかし憲法制定議会では二つの異なる国民代表機関が存在することへの懸念が何人かの議員から指摘された。時の金森憲法担当国務大臣は衆院の優先性があるから懸念には及ばないと繰り返し答弁した。 世界で二院制を採っている国は4割弱の60カ国余りだ。第二院はイギリスでは貴族などで構成され世襲制で終身制、ドイツは任命制で州の首相などが務める。フランスは間接選挙で下院議員や県会市町村議員が投票人だ。アメリカの上院は各州から選出される。ほぼ同等の権限を持ち国民の直接選挙で選ばれる日本の参院制度の特異性が目立つ。それが日本の決められない政治の温床になったり、参院選の敗北の責任を取って何人かの総理が辞任したり政治の不安定の要因になってきたのは周知の事実だ。まさに憲法制定当時から懸念されていた課題が浮き彫りになっていると言える。しか..
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ikuo-horigome
2018-07-19T10:25:18+09:00
そもそも13年参院選の一票格差が「違憲状態」とする最高裁判決があって15年の公選法改正で合区を導入した。その際「19年の参院選に向け抜本的見直しを検討し必ず結論を得る」と付則に明記したのではなかったか。読売、朝日、毎日など各紙の社説は一斉批判し、野党はもちろん、自民党の衆院側からも強い懸念の声が出たのは当然だ。
もともと参院制度は憲法制定過程から問題を孕んでいた。GHQから示された憲法原案は一院制だった。日本側の強い要望を受け、GHQも貴族院とは違って国民の選挙で選出される第二院ならば、ということで参院制度が生まれた経過がある。そして憲法43条に「両議院は全国民を代表する選挙された議員で組織する」と規定された。しかし憲法制定議会では二つの異なる国民代表機関が存在することへの懸念が何人かの議員から指摘された。時の金森憲法担当国務大臣は衆院の優先性があるから懸念には及ばないと繰り返し答弁した。
世界で二院制を採っている国は4割弱の60カ国余りだ。第二院はイギリスでは貴族などで構成され世襲制で終身制、ドイツは任命制で州の首相などが務める。フランスは間接選挙で下院議員や県会市町村議員が投票人だ。アメリカの上院は各州から選出される。ほぼ同等の権限を持ち国民の直接選挙で選ばれる日本の参院制度の特異性が目立つ。それが日本の決められない政治の温床になったり、参院選の敗北の責任を取って何人かの総理が辞任したり政治の不安定の要因になってきたのは周知の事実だ。まさに憲法制定当時から懸念されていた課題が浮き彫りになっていると言える。しかも現状の参院は抑制と均衡の役割を果たすどころか衆院のカーボンコピーと揶揄される始末である。
参院は果たして必要なのか、多くの国のように一院制でも良いのではないか、たとえば年金制度とか財政再建など長期課題に取り組むなど衆院とは違う権限の院にすべきではないか、などなどこれまでも様々な議論が行われてきた。参院の改革は憲法43条や59条の再可決要件などの改正を含む憲法制定時以来の大切な課題だ。会期末のドサクサに紛れて小手先の党利党略的な公選法改正で済まされる問題ではない。改革をネグレクトし平気で定数増など当座を凌ぐ国会に、行財政改革を語ったり、来年の消費増税を唱える資格はあるのだろうか?
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年配者の「君たちはどう生きるか」
https://hori-ikuo.blog.ss-blog.jp/2018-05-23
「君たちはどう生きるか」のマンガ版(芳賀翔一・マガジンハウス)が大ヒットし今も売れ続けているという。ブームが起きてかなりの日数が経つのに、いまだに多くの書店で特設コーナーを設けて売り出している。もともとの原本は1937年に吉野源三郎によって書かれ「日本少国民文庫」(新潮社)の一冊として刊行された。前年の36年には二・二六事件が起り、この年は盧溝橋事件が勃発、日中戦争の泥沼化と軍国主義へ大きく傾斜して行く年であった。そんな時代に子どもたちにしっかり生きて欲しいという願いを託して書かれた本である。 山の手の知的エリート的な家庭の旧制中学二年生コペル君こと本田潤一と叔父さんとの対話をベースとして物語は展開される。ニュートンやナポレオンが登場し科学や歴史への見方を学び、いじめに直面したコペル君の行動と苦悩も描かれている。活字離れが進み、出版業界の不況が深刻化する中で80年前のこの本が売れるのはなぜか?作者の吉野源三郎(1899~1981)は戦後民主主義の旗手として、岩波書店の雑誌「世界」の編集長として長くその任にあたったことで知られる。この原本はその吉野の若き日の一冊である。吉野は東京師範学校附属小中学校を卒業し旧制一高、東京帝国大学経済学部へ進む。こうした吉野の経歴から「君たちはどう生きるか」のコペル君は東京山の手育ちの吉野の自伝的小説だという見方もあり、教育者や学生に愛読された作品である。現代の教育者や子を持つ親も、コペル君が上級生のイジメを目撃し仲間を見捨てる罪悪感などに現代教育の直面する課題と重なり合うものを感じたのだろうか。それとも子や孫に「未来の知識人」を期待してのことだろうか。ブームの要因としては、はっきりしない。 しかし今回の大ヒットは、どうやら年配者にけん引されているようだ。私も数軒の本屋で「どんな人たちがお買い求めになられるか」と店員さんに訪ねてみた。「年配の方が多いです」という返答だった。マンガと同時に刊行された新装の「君たちはどう生きるか」(マガジンハウス)で前書きを執筆した池上彰も源三郎の長男吉野源太郎(元日経新聞論説委員)との対談で、子どもたちの両親やおじいさん、おばあさんが買い与えているためだと分析している。(文芸春秋18年3月号) 戦後、吉野は「世界」を拠点に51年の「単独講和か全面講和か」60年の「安保改定」などに挑み続けるが、自身で敗北を認める結果を味わう。「君たちはどう生きるか」の..
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ikuo-horigome
2018-05-23T15:48:32+09:00
山の手の知的エリート的な家庭の旧制中学二年生コペル君こと本田潤一と叔父さんとの対話をベースとして物語は展開される。ニュートンやナポレオンが登場し科学や歴史への見方を学び、いじめに直面したコペル君の行動と苦悩も描かれている。活字離れが進み、出版業界の不況が深刻化する中で80年前のこの本が売れるのはなぜか?作者の吉野源三郎(1899~1981)は戦後民主主義の旗手として、岩波書店の雑誌「世界」の編集長として長くその任にあたったことで知られる。この原本はその吉野の若き日の一冊である。吉野は東京師範学校附属小中学校を卒業し旧制一高、東京帝国大学経済学部へ進む。こうした吉野の経歴から「君たちはどう生きるか」のコペル君は東京山の手育ちの吉野の自伝的小説だという見方もあり、教育者や学生に愛読された作品である。現代の教育者や子を持つ親も、コペル君が上級生のイジメを目撃し仲間を見捨てる罪悪感などに現代教育の直面する課題と重なり合うものを感じたのだろうか。それとも子や孫に「未来の知識人」を期待してのことだろうか。ブームの要因としては、はっきりしない。
しかし今回の大ヒットは、どうやら年配者にけん引されているようだ。私も数軒の本屋で「どんな人たちがお買い求めになられるか」と店員さんに訪ねてみた。「年配の方が多いです」という返答だった。マンガと同時に刊行された新装の「君たちはどう生きるか」(マガジンハウス)で前書きを執筆した池上彰も源三郎の長男吉野源太郎(元日経新聞論説委員)との対談で、子どもたちの両親やおじいさん、おばあさんが買い与えているためだと分析している。(文芸春秋18年3月号)
戦後、吉野は「世界」を拠点に51年の「単独講和か全面講和か」60年の「安保改定」などに挑み続けるが、自身で敗北を認める結果を味わう。「君たちはどう生きるか」のヒットは、吉野と同じ敗北感を味わい戦後を生きた私たち高齢世代の思考のジレンマが要因の一つと言えるかも知れない。この本は、戦後民主主義の世代、60年安保世代、70年前後の全共闘世代等々、一度は「世界」を小脇に抱えて反戦平和を唱え、心情的に岩波文化に同調した世代の数多くの人々によって読まれているのではないか。自らを進歩的と自認しながら、今なお行き場に迷っているわれわれ高齢者のノスタルジアが本を手に取るきっかけになっているのではないか。若い世代だけでなく、年配者になっても「君たちはどう生きるか」が問われていることは確かである。
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