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背景

 折から安全保障法案の国会審議の山場で、かねてから自民党に懸念されていたことが露呈した。百田尚樹氏を講師に開かれた勉強会でマスコミ批判が噴出したことである。百田氏は「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」と発言し、出席した議員からは「マスコミを懲らしめるためには広告料収入を絶つのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すれば良い」などの発言が相次いだ、とされる。
 かねてから安倍総理、安倍政権には歴史認識が懸念されていた。安倍首相は、戦後レジーム脱却を訴えたり、「侵略という定義は定まっていない」と発言したり、靖国参拝と合わせ、その歴史認識が危ぶまれてきた。この70年間、日本政治は左右の勢力の対立もあったが、戦後民主主義の果実の上に、国民のコンセンサスが形成され安定社会が築かれてきた。安全保障分野でも防衛的で抑制的な姿勢が貫かれてきた。安倍政権でも懸念されていた歴史観は別に、具体的政策の実行段階では、その伝統が受け継がれ、大筋、国民の同意も得て支持率も高い水準を維持してきた。
 だが懸念されるのは信条優先の人事の偏りだと指摘される。NHKの会長に籾井勝人氏、続く経営委員に百田尚樹氏や長谷川三千子氏等「東京裁判史観」批判を展開したりする人たちを選任した。また今年、安倍内閣の女性閣僚3人が揃って靖国参拝し、歴史観の異なる自民党女性議員は閣僚ポストから遠ざけられた、とする見方もあった。自らの価値観に近い人を重用し、ポスト任命の基準にする志向が目立っていた。今回の安倍再選を目指す「文化芸術懇話会」のメンバーも、こうした歴史観を持つ人が多いという。異なる意見を持つ人を排除したり遠ざけるのではなく、多様な意見に耳を傾け人材の登用も図る、謙虚で度量の大きさこそが求められる。生き生きした組織運営のためには、内部に多様性を抱え活発な議論が行われることが絶対的に必要という。
 皮肉にも安保法案の審議を混乱させ政権批判をもたらした今回の一連の動きの背景に、歴史認識や人事政策の影響を感じてしまうのである。
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