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チャレンジ精神は甦るか

 政府は8日経済財政諮問会議に示した「骨太の方針」で「日本が世界から取り残され埋没しかねない」と危機感をあらわにした。科学技術など多くの分野で、日本の国際的地位の低下が指摘されて久しい。コロナ危機への対応でも日本のデジタル化への遅れが明らかになった。一律給付金や助成金などの事務作業のもたつきに加え、医療現場でのオンライン診療、教育現場でのオンライン授業など諸外国に比べて立ち遅れが指摘された。科学技術立国を誇っていた日本の地位の低下はかねてから懸念されていた。研究論文数で米中両国に大きく後れを取り、世界大学ランキングでも100位以内は東大と京大のみという状況だ。最先端技術で凌ぎを削る半導体分野でも、かつて世界のベスト10の上位を独占していた日本企業は姿を消しトップランナーの地位から完全に脱落した。一人当たりGDPでもかつての世界4位から26位まで後退した。
 後退の要因は数々指摘される。チャレンジ精神を失った活力の衰えがその一つとされる。80年代後半には昭和時代に急成長した経済に自信を持ち、日本中が繁栄を謳歌しバブル経済に踊った。だがこの過程で努力や勤勉の尊さを失って行った。そして90年代始めのバブル崩壊のショックを受けた日本企業はその後遺症を引きずる。臆病になり過ぎ、投資や賃上げに資金を回さず、ひたすらため込み内部留保を積み上げることに注力した。結果、リスクを取って新しい投資を避けるあまり、新製品や新サービスを産み出せなくなった。バブル後遺症のチャレンジ精神の喪失こそが停滞の要因の一つとされる。
 この傾向は官の世界にも波及し、チャレンジする精神、課題に立ち向かう姿勢が官僚たちから失われていったと指摘される。明治以来、優秀な官僚たちはエリートであり続け日本の発展を支えてきた。大蔵省はじめ各省庁には日本の頭脳が集まり政策の立案、実行に手腕を発揮してきた。城山三郎さんの小説「官僚たちの夏」に生き生きと描かれているように、彼らは総じて「国を背負う気概」に燃えていた。優秀なエリート官僚から何人もの総理大臣はじめ有力な政治家が数多く生まれ、経済界、学界などにも多くの人材を輩出した。だが平成の30年間で彼らの中に気概みたいなものが薄れ、国家国民よりも省益や組織防衛優先の姿勢が目立つようになったとされる。
 このように官民から進取の精神が失われ、国民全体にも安全指向が強まりチャレンジ精神が喪失したことが国際的地位の低下の要因とされる。打開する切り口は、やはり政治だ。長期に及んだ安倍政権は官邸中心の安全指向の政権運営が特徴のように見える。与野党の国会論戦も当面の課題が中心だ。衆院任期満了が迫り解散の話題が飛び交う中、人気取り的な短期思考でなく、将来課題に真正面から取り組むことが今後の政治には必要だ。与野党を問わず、問題意識を共有して中長期課題に取り組みことが求められる。企業や官僚が輝きを取り戻し日本再生を果たして行くために政治のリーダーシップを期待したいものである。

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