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1票格差判決

 11月20日最高裁は、選挙無効を求めた訴えに対し、投票価値の平等に反する違憲状態だったとしながらも、選挙無効の請求は退ける判決を下した。続いて今年6月の参院選の選挙無効訴訟の判決が全国の高裁で順次言い渡される。国政選挙の度に繰り返される違憲訴訟は慣例化した感さえする。その都度、国会の怠慢が指摘されるが、各党は国民受けを意識して定数削減と絡めて議論するため、さっぱり議論が収斂しない状態が続いてきた。衆議院の場合、一人別枠方式を止め、選挙区画定審議会設置法のとおり10年毎の国勢調査に基づき自動的に修正することで何の問題もないと思われる。だが0増5減を決める際に、一人別枠方式を法律文からは削除しながら、選挙区を規定する公職選挙法の別表で別枠方式を維持したことから、将来にまた禍根を残した。次回総選挙では2倍超の選挙区がいくつか発生し、またまた選挙無効の訴訟が起こることは明らかだ。公選法の別表を国勢調査の度に人口比に基づき自動改正することで解決する問題だと思われる。
 判決後の各党や識者の反応は様々だが、憲法14条の法の下の平等に根拠を求める訴訟は果たして適切で合理的なものかどうか。もし1票の価値の平等を徹底的に追求するなら比例選を選択せざるを得ない。現に原告団の中には全国一区の比例制にすべきと主張する弁護士も数多く居る。しかし比例制を採用している国々では多党化し政権の不安定が続く。選挙制度は統治の仕組みに関わる問題で、安定した政権運営を期待する制度の設計が求められるのは当然だ。1票の価値の平等の視点のみで考察されるべきではない。
 また1票格差是正を進めると、都市部の議員だけが増え、地方の声が国政に反映されない、したがって面積、人口密度、住民構成、交通事情などを考慮すべき、とする意見も強くある。だが、こうした条件を考慮して1票価値の平等と調和する制度設計は至難と思われる。衆院の場合は人口格差2倍以内を基本に考慮されるべと思われる。
 また各党の判決後の談話では定数削減と絡めて進めるべきとの指摘が多い。日本の議員定数は諸外国と比べて決して多くはない。1票価値の平等とは切り離して議論すべき課題だ。参議院を地方代表性を考慮した機能にするなど統治形態のあり方を含めて検討すべきで、やはり第9次の選挙制度審議会を設置して議論を深めるべきではないだろうか。
 
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